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【谷口・青谷和紙/鳥取市】世界で初めての「立体漉き和紙」で、伝統工芸をモダンなインテリアに!

2020年3月21日

鳥取県の伝統工芸・「因州(いんしゅう)和紙」を受け継ぐ創業90年超の老舗。和紙を3次元に漉きあげる革新的な技術を生み出し、独自の「立体漉き和紙」としてブランド化。ランプシェード・壁紙・ステーショナリーなど、多彩な製品で現代の暮らしを彩っている。

「現代に活きる和紙」をテーマに、モダンでクリエイティブな和紙製品をお届け。

楮(こうぞ)などの植物を原料に、丁寧に漉きあげる和紙。強く、美しく、しなやかな性質を持ち、光を柔らかく透かす趣(おもむき)深さもあって、風情豊かな日本の暮らしの中で永らく愛されてきました。

そんな和紙を、モダンかつハイテクにリニューアルしたのが『谷口・青谷和紙』。
1枚の平面ではなく、立体的な3次元に漉きあげる革新的な技術で、紙業界を超えてインテリア界・デザイン界にも新風を巻き起こしています。

竹ひご等のフレームに張る「和紙提灯(ちょうちん)」等と比べ、影を落とす骨組みを持たないため、原料の楮(こうぞ)の繊維感が美しく映し出される。その柔らかな光は、見る者を寛ぎの境地へといざなう。

「現代の用に供する」ために、機能性・感性の両面を満たすクリエイティブな和紙を開発。平面の和紙も高い品質と情緒を誇っている。
(施工例:パーティション/株式会社インフォメーション・ディベロプメントの役員受付)

『因州和紙』の起源は定かではないが、奈良時代に記された「正倉院文書」にまでさかのぼることができる。そして平安時代に編さんされた「延喜式(えんぎしき)」には、“因幡の国(いなばのくに/鳥取県東部)から朝廷に紙が献上された”という記述があり、江戸時代には鳥取藩の御用紙としても、庶民が使う紙としても盛んに生産されていた。また、藩外にも移出されて紙座(紙商人の組合)で取引されていた(原料の楮(こうぞ)の加工の様子)。

和紙そのものを3次元に漉き上げる、革新的な技術!

この『立体漉き和紙』を開発したのは、“和紙プロデューサー”として名をはせている代表取締役の谷口博文氏でした。貴重な伝統工芸でありながら、時代の流れに埋もれつつあった「因州和紙」を現代化を図りながらリファイン(洗練)。ランプシェード・ステーショナリー・ラッピング・壁紙など、今の暮らしに馴染むアイテムを生み出しています。

「その延長上に『立体漉き和紙』はあります。開発のきっかけは、照明に携わる方との出会いでした」と谷口氏は振り返ります。

「まずは『和紙を半球形に漉けないだろうか?』とのご提案を頂いて、鳥取県工業試験場の全面的な助力を得て、2年かけて技術開発と量産化にこぎつけました。その後に、今度は極めて困難な『球形和紙』の開発への想いが強くなりました。そこで引き続き鳥取県工業試験場の助力を得て、1996年に世界初の『立体漉き和紙』の開発に成功しました。いずれも試行錯誤の連続で、粘り強さが必要でしたが、お蔭様で今は多くの企業やアーティストとコラボレーションするに至っています。」

こうして日本唯一の『立体漉き和紙』が誕生!
和紙の未来を切り拓き、紙の可能性をも広げています。

明治期に導入された木材パルプを利用した製紙=「洋紙」の普及に押されて、和紙は大正末期頃から徐々に生産量が減っていった。安価で大量生産できる洋紙はすっかり紙製品の主流となったが、和紙にしか出せない質感やクオリティ、有用性も忘れられてはおらず、それらも変わらず人々に愛され続けている。
『谷口・青谷和紙』はそんな和紙の伝統を受け継ぎながら、現代の暮らしに役立つ製品を生み出し続けている。

フランスでのワークショップの様子。その質感と技術に世界が驚く!

「ひょっとして和紙!?」  驚きと感動をもたらす独特の質感。

「『なんだか見ていてくつろぐなぁ。触ってみると……ひょっとして和紙!?』というのが弊社の理想です」と谷口氏は語ります。

「今は和室がある住宅が減っており、そんな住宅事情に合わせて洋室にもマッチする和紙製品を作っています。特に弊社の代表的な製品かつ多くのアーティストや企業とコラボしている『和紙ランプ』は、和紙の伝統を伝えるとともに、寛ぎや落ち着きを感じていただけるアイテムとなっています」

和紙=和室という思いこみをくつがえす「こなれ感」。洋室にもしっくり馴染む万能のインテリアです。

「森MORIシリーズ」。フィンランドのデザイナー KLAUS AALTO / ANNA SALONEN / Saana Sipilä らと出会って生まれた、北欧デザインの潮流を汲むランプシェード。
「素材を活かしたシンプルで美しいフォルム」と、「機能的かつ手仕事の温かみが感じられる仕上がり」が特長で、フィンランド・デザインらしいオーガニックで可愛らしいフォルムも人気。モダンな洋室にもよく映える。

上部にのみシワ加工を施した「semi-wrinkle_washiシリーズ」。
佐藤オオキ氏が率いる世界的なデザインオフィス「nendo」とのコラボレーションで、柔らかさと緊張感が両立した立体漉き和紙ならではの表現が魅力(Photo:岩崎寛)。

伝統を受け継ぎながら、日々の暮らしを豊かに。生活文化の向上に役立つ製品にこだわっている(施工例:パーティション/鳥取コナン空港のレストラン「アゼリア」)

インテリアの可能性と独創性を広げる、充実のラインナップ。

こうしたそうそうたる製品の中でも特におすすめなのが、自社でデザインを起こした「Naturalシリーズ」だそう。さらに「Mokumokuシリーズ」という雲をイメージした一群は、角度ごとに見え方が異なるアシンメトリーなラインが好評です。

いずれもぼんやり眺めているだけで、豊かな気持ちになれる逸品。日々目にするインテリアを、癒しの装置に高めてくれます。

「Naturalシリーズ」。雲や繭といった自然のモチーフをテーマに、和紙の素材感を活かした自然美のデザイン性が見る人の心を和ませる。

鳥取県が誇る伝統工芸として、多くのランドマークや施設に採用されている。(施工例:鳥取砂丘ビジターセンター)。

フィンランドを代表するインテリア・デザイン展示会「ハビターレ」での展示の様子。

『立体漉き和紙』は海外へ、そして宇宙へ!

和紙業界だけでなく、紙業界全体にも革新をもたらしている『谷口・青谷和紙』。海外にもその名は広まっていて、フランスの「メゾン・エ・オブジェ」やイタリアの「ミラノサローネ」など、世界の一流の家具見本市でも注目されています。

そんな『谷口・青谷和紙』が、さらに宇宙にまで旅立つかも!? という画期的なニュースがあります。

「ある時、東海大学の角田教授から『宇宙探査車両のホイールとして使えないだろうか?』というご連絡を頂きました。折り畳みできて、積みこむ時にかさばらず、質量が少なくて繊維が長くて破れにくい――そんな多くの利点を持つ『谷口・青谷和紙』が、いつの日かタイヤとなって月面を走る日が来るかもしれません。とても夢があり、和紙の未来も広がるお話だと思います」

日本の伝統の和紙が、海外へ、そして宇宙へ。
伝統を受け継いで未来を見据える『谷口・青谷和紙』の挑戦は、まだまだ続きます。

世界最高峰のインテリアが集う、フランスの「メゾン・エ・オブジェ」での展示の様子。

東京で催された「IFFTインテリアライフスタイルリビング2016」での展示の様子。家庭に、店舗に、公共施設にと、様々なシーンで彩りを添える。

「第16回因州和紙あかり展」(2020年3月22日(日)まで「あおや和紙工房」で開催)など、地元・鳥取県や国内でも普及に努めている(豊かな因州の自然の中に建つ工場)。

原料の楮(こうぞ)。エコな素材が最新のインテリアとなる驚き。

- DATA
谷口・青谷和紙株式会社

HP:https://www.aoyawashi.co.jp/
住所:鳥取県鳥取市青谷町河原358-1

電話:0857-86-0116
営業時間:8:00~17:00
休日:土・日・祝日

取材協力・写真提供:谷口・青谷和紙株式会社/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら

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