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【匹見ワサビ 葵屋/匹見町】かつて日本の2大名産地に数えられていた、深山の清流で育てた高級ワサビ!

2020年7月31日

かつて「東の静岡、西の島根」とたたえられていた島根県匹見町(ひきみちょう)産の高級ワサビ。それをI・Uターン者たちが中心となって「ワサビ田」の再生・復活に取り組み、、生ワサビ・花ワサビなどを販売している。
さらに、匹見町の名産品・クロモジ(香木)で仕込んだ焼酎も企画開発。匹見町の自然が育んだ財産を全国に届けている。

「青いダイヤ」と呼ばれたワサビを復活! 「東の静岡、西の島根」の名声をふたたび。

島根県の西南部、広島県と山口県に接する匹見町。
中国山地の深奥にあり、町の96%が落葉広葉樹などの森で占められています。

そのため町のそこかしこに清らかな水が流れ、目が覚めるような美しい清流が多数! この水と緑と岩々が織りなす美しい景観で、「西中国山地国定公園」に指定されています。

そんな美しい匹見町の自然が育んだのが、この『匹見ワサビ』。
かつて「東の静岡、西の島根」とたたえられ、関西市場で50%のシェアを誇っていました。

この『匹見ワサビ』と荒廃が進んでいた栽培地・「ワサビ谷」を復活させて、その名声を再びとどろかせつつあるのが『葵屋 (あおいや)』です。
『匹見ワサビ』とそれを活用した特産物を販売し、豊かな匹見町の恵みを全国に発信しています。

かつて料理界にその名をとどろかせた『匹見ワサビ』。豊かな香り・澄んだ辛味・粘り強い食感などで一世を風靡したが、たび重なる水害と生産者の高齢化によって衰退。それをI・Uターンした人々と匹見町の人々が一体となって復活させた。

匹見町がある益田市には、”水質日本一”に6回も輝いた日本有数の清流・高津川が流れている。『匹見ワサビ』を育てている匹見川はその支流で、水質と環境の良さは折り紙つき!

限りなく天然に近い環境で、名高い高級ワサビが育つ。

「匹見ワサビ」の栽培は、限りなく自然に近い方法と環境で行われています。

東日本の名産地・静岡県産のワサビは人工的に石を組んだ「畳石式ワサビ田」で育てますが、『匹見ワサビ』は山の急斜面に石を積み、自然の清流が流れ落ちるようにした「渓流式ワサビ田」で栽培しています。
そのためかつて匹見地域に自生していた野生ワサビにも負けない、ナチュラルで済んだ味わいなのです。

「この『渓流式ワサビ田』は、標高500m以上の高冷地にあるので夏でも冷涼です。さらに冬は2m以上の雪に覆われ、風味と甘みが際立つワサビが育ちます」

そう語るのは、『葵屋』の責任者で京都からIターンした安藤達夫さんです。

「冬の積雪期はワサビの成長が止まるため、栽培期間が他の産地よりも長くなります。さらに形が小ぶりで多少いびつになりますが、だからこそ味とうまみがその中に凝縮されるのです。いわゆる『雪下野菜』のようなもので、すりおろしたときの香りと味わいは格別です」

伝統の「渓流式ワサビ田」とこだわりの栽培方法によって、小ぶりながらも緻密(ちみつ)で粘り強い、辛味・甘み・香りが際立ったワサビになる。

かつては「わさびは匹見産でなければ!」という仲買人の声が市場で飛び交っていたそうです。その味と品質から、最盛期の昭和20年代には、背負いカゴ1杯分の『匹見ワサビ』に当時の金額で10万円もの高値がついていました。

気候が温暖な静岡県などと比べると、豪雪地帯の匹見町はワサビにとって大変厳しい環境。ですが、その厳しい風土こそが絶品のワサビを育てるのです。

青みが強い澄んだ色あいと、きめ細かく風味と粘りに富んだ肉質。そのため「青いダイヤ」とも呼ばれ、東日本の名産地・静岡県産や全国生産量トップの長野県産と比べても、「マイルドな辛さの中にも甘味が漂う」と高く評価されてきました。

今も東京や大阪の料理人が自ら「渓流式ワサビ田」を見学にきては、育てられている環境と味に感激して仕入れていくそうです。

山奥の急斜面での栽培は困難で、昨今の異常気象による水害の影響も受けやすいが、それが‟幻のワサビ”と呼ばれる美味を生み出す。

幻の『匹見ワサビ』をとりどりの料理で味わう! ~商品ラインナップ~

そんな貴重な『匹見ワサビ』は、生ワサビのほか、花わさび醤油漬け・ワサビとろろなどで味わえます。
いずれも数が限られた貴重な珍味なので、食べてみたい方は販売時期を見逃さないようにしましょう。

●匹見ワサビ

伝統の「渓流式ワサビ田」で丁寧に育てて収穫された生ワサビ。生産量の少なさから市場に出回りにくく、‟幻のワサビ”とも呼ばれています。

●花わさび醤油漬け

3月下旬~4月上旬に咲く花のつぼみが付いた、葉の先端部分だけで作った醤油漬け。
それだけでも贅沢な珍味ですが、普通の「花わさび醤油漬け」にありがちな、化学調味料や香料による味のごまかしは一切行なっていません。そのため花わさび本来の香りと風味を存分に味わえます。

食べ方は、そのままサラダのように味わうほか、ごはんやパスタに混ぜたりお浸しにしても美味です。花や葉茎のシャキシャキ感を満喫してください。

収穫前の花ワサビ。ワサビは根茎だけでなく、花芽や葉柄も美味しく食べられる。ホロ苦さ・爽やかな香り・まろやかな辛味が特徴で、春の限られた期間しか収穫できない貴重な珍味。

●匹見ワサビ自然薯とろろ

匹見町がある益田市で採れた自然薯と、『匹見ワサビ』を合わせたとろろ。ワサビの辛さと風味がほどよくて、蕎麦やマグロの「山かけ」にピッタリ!
牛丼やステーキなどの肉料理に載せても、肉の旨味に負けない豊かな香りが楽しめます。

蕎麦・牛丼・マグロの刺身や海鮮丼などに、かけるだけでメニューがランクアップ!

●クロモジ焼酎 「HIKIM烏樟森香(うしょうもりのか)」

匹見の豊かな山に自生する広葉樹・「クロモジ(黒文字/烏樟)」を、麦焼酎のもろみと混ぜて蒸留した焼酎。クロモジの華やかでスッキリとしたボタニカルフレーバーが、焼酎が苦手な女性にも人気です。

味は甘い香りに反した辛口で、最後にほんのり麦の甘みが漂い、食中酒として飲めるようにマイルドに仕上げています。特に油の強い料理や味の濃い料理に合います。

清らかな水と爽やかな森の風をイメージさせる‟森のお酒”で、ロック・ハイボール・カクテルベースでも楽しめます。

高級つまようじや箸の材料として知られるクロモジ。日本固有種の香木で、ハーブティーやクッキーの材料としても人気。
もちろん「HIKIM烏樟森香」にもその香りが生きていて、その木香(もっこう)フレーバーが普通の芋や麦ベースの焼酎が苦手な女性にも好評。

ジンとトニックウォーターを加えてジントニックに。柚香と炭酸を混ぜて柚香に。白ワインとジンジャーエールで割ってスパークに、お好み次第でアレンジできる。

新たな森林資源の活用策として、2017年からクロモジ焼酎作りを開始。『葵屋』が「島根県産業技術センター 浜田技術センター」の指導を受けながら、酒造会社の「岡田屋本店」と共に取り組んで、2019年4月に発売した。
今は将来的な原材料の確保に向けて、「島根県中山間地域研究センター」の指導を受けながらクロモジの栽培にも取り組んでいる。

歴史と気候の激変で衰退した『匹見ワサビ』を、人々の力で再興。

匹見町に広がる森は、一年を通じて安定した量と温度の水を恵んでくれます。そんな潤いに満ちた山のそこかしこには、昔から香り高い野生のワサビが自生していました。
それを江戸時代の終わり頃から人々が栽培。そして最盛期の昭和初期には、年間約300トンもの生産量になりました。

しかし、その後は戦争による労働力不足や需要の激減、そしてたび重なった水害と病虫害によって、かつて「青いダイヤ」とまでたたえられていた『匹見ワサビ』、どんどん衰退してしまったのです。

さらにワサビ農家の高齢化や、静岡県産ワサビの関西市場への進出、安い輸入わさびの普及などによって、昭和50年代後半には関西市場のシェアが20%にまで低下。
加えて地球温暖化や杉・ヒノキなどの針葉樹の植林による「渓流式ワサビ田」の環境変化もあり、本当に‟幻のワサビ”になりかけてしまいました。

日本古来の落葉広葉樹が生い茂る、匹見町の森。荒れ果てた「ワサビ谷」の再生と共に、この豊かな自然環境と『匹見ワサビ』の復興が進められた。

『匹見ワサビ』の復活を目指して「ワサビ谷」を修復!

そんな流れを食い止めるべく、昭和62年に生産者自身がワサビを加工・保管できる「匹見特産加工組合加工場」が完成。
そして新鮮なまま保存・輸送するための急速冷凍冷蔵庫や、最先端の加工器具なども整備して、ただ生ワサビを売るだけでなく、様々な加工品を開発できるようになりました。

さらに昭和63年には、優良品種の保護や新たな品種の開発を行なう「わさびバイオセンター」が完成。苗の量産が難しかったワサビを、1本の親ワサビから2、3千本もの苗を増やせるようにしました。

しかし、「渓流式ワサビ田」で生産する「谷ワサビ(水ワサビ)」は、高齢化が進む中でワサビ田が奥地にあり、徒歩で通うには体力的に大変なことから衰退していきました。
そんな状況の中で、10年ほど前にIターン者によって『葵屋』が発足。ボランティアの力を借りながら、耕作放棄地となっていたワサビ谷の復旧など、ワサビ造りの環境から再生を進めることになりました。

「渓流式ワサビ田」の復旧作業は重労働のため、賛同してくれるボランティアを募集。彼らの尽力で多くの「渓流式ワサビ田」と、それが連なって形成される「ワサビ谷」が復活した。

美しい庭園のようなたたずまいの整備されたワサビ田。

そして現在。『匹見ワサビ』は再び「東の静岡、西の島根」の名声を取り戻しつつあります。

「ですが、まだまだ耕作放棄された『渓流式ワサビ田』は多く、『葵屋』はその復旧と共に『匹見ワサビ』の生産拡大を目指しています」

と安藤さん。

「匹見町の『渓流式ワサビ田』は、先人たちが人力で築き上げた石積みの構造物です。これを活用すればほぼ天然に近いワサビを育てることができますが、荒れ果てたままでは価値はゼロ。それを我々が手を入れ、甦らせて活用することで、他の地域ではマネのできない貴重な財産となります」

ワサビは水質や気温などの条件によって、栽培できる場所が非常に限られます。現存する「渓流式ワサビ田」はそれを高い水準で満たしますが、同じものを一から構築するとなると、莫大な経費がかかります。

「そういったコストや手間を考えると、『渓流式ワサビ田』は大変貴重な遺産です。その美しい景観と共に匹見町の未来に残していかなくてはなりません」

と安藤さんは語ります。

ワサビを匹見町の特産物として遺し、「渓流式ワサビ田」と「ワサビ谷」を郷土の景色として遺す――それがひいては匹見町全体の振興や、人々を呼び込む資産となっていく、と安藤さんは考えているそうです。

匹見の豊かな山々と共生し、その環境を活かした恵みを悠久に育む。『葵屋』による‟幻のワサビ”復活の取り組みは、郷土の未来にもつながっています。

幻の『匹見ワサビ』と共に、匹見の郷土と環境をも再生。すべてが繋がり、広がっていく財産として、未来の子どもたちにこれらを遺していく。

匹見町では地域学習の一環として、中・高校生に「渓流ワサビ田」を見学させている。「練りワサビ」しか食べたことのない子どもたちは、いざ『匹見ワサビ』を試食すると本物の味に驚くそう。

芳醇な香り・鼻に抜ける爽やかな辛味・その後に残る甘みのハーモニーに、「ワサビが嫌いだったけど好きになった!」という声が多数。

- DATA
匹見ワサビ (株式会社 葵屋)

HPhttps://hikimiaoiya.com/
住所:島根県益田市匹見町紙祖イ262

電話・FAX:0856-56-1411

取材協力・写真提供:株式会社 葵屋/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら

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