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【日貫一日/邑南町】ここに来て、泊まる理由がある。島根の山峡で「何もない」贅沢な時間を遊ぶ旅行。

2020年8月4日

島根県庁などを設計した建築家・安田臣氏が設計した築90年の木造平屋を、第一線級のクリエイターたちがリノベーションした宿。建物をまるごと貸し切る「一棟貸し」スタイルで、気兼ねなくゆったりした時間を過ごせる。
夕食は京都の名料亭・「草喰なかひがし」の主人を父に持つ中東篤志さんが監修。地元・邑南町(おおなんちょう)の食材をアレンジしたオリジナルレシピを、ゲストが自ら調理するスタイル。
田園と赤瓦の屋根が並ぶ中国山地の山里で、忙しい日々を忘れて癒しのひとときを過ごそう。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

「何もないけどすべてがある」。この特別な空気感の中で、贅沢な休暇を満喫。

中国山地のふところにある、邑南町(おおなんちょう)は日貫(ひぬい)。
ここには川のせせらぎの音、風のささやき声、滋味あふれる郷土料理などの、素晴らしい財産が多々残っています。

そんな誰もがノスタルジックに感じる山里に、地元の旬の食材を自ら料理して、この地ならでの一日を遊べる宿ができました。

その名は『日貫一日(ひぬいひとひ)』。
きれいな水・豊かな食材・季節によって変わりゆく山の色や風の香りといった、田舎ならではの素晴らしい体験が待っています。

誰もが懐かしく思う山里で、大切な人とゆったり過ごすひととき。ここだからこそ体験できる特別な一日を、川のせせらぎが聞こえる縁側で、風が吹き抜ける気持ちの良い土間で、自由気ままに過ごせる。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

山・田畑・鎮守の森。まるで昔話の舞台のような地で、人と自然に触れあう休日を。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

名だたるクリエイターたちの最先端×島根県の古民家のコラボ。

『日貫一日』は、フロント棟の「一揖(いちゆう)」と宿泊棟の「安田邸」の2棟から構成されています。

最初にゲストを迎えてくれる「一揖」は、小学校の廃材を活用して建てられた、学び舎の面影が残る建物。デザイナーの加藤正基さんによる設計で、懐かしさの中にも都会の雑貨店のような洗練感があり、ウッディな居心地空間の中でお茶を飲んだり朝食を味わったり、イベントやワークショップに興じたりできます。

「一揖」の名の由来は「会釈する」という意味。最初にゲストを迎える日貫の玄関であり、旅のはじまりの場所でもあることからこう名付けられた。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

『日貫一日』のフロント兼 朝食ラウンジでもあり、日貫の人々の交流の場や、地域の情報発信の場としても活用されている。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

赤瓦の屋根が鮮やかな「安田邸」。石見(いわみ/島根県西部)地方の伝統工芸品・石州瓦(せきしゅうがわら)で、里の家々ともおそろい。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

そして「一揖」から少し離れた場所にある「安田邸」は、築約90年の古民家です。
石見地方 独特の赤い瓦屋根と、名だたる建築家やクリエイターたちの手でリノベーションされた建物が、木の香りを漂わせながら温かく迎えてくれます。

こちらは建築家の家成俊勝さんらが率いる「dot architects(ドット アーキテクツ)」と、歴史的建造物の修復に定評がある清水徹さんの「アトリエ縁」が手がけました。

間取りはキッチンとテーブル席がある土間・2つの寝室・広々としたヒノキ風呂の浴室・そして野に開かれたウッドデッキからなっています。
古民家の面影を残しつつ新たな創造性を見せるしつらえは、周囲の美しい自然とマッチしながら上質な存在感を放っています。

ここでは日常、だが都会人にとっては新鮮な空間。山里の暮らしに溶け込みながらゆるやかな空気に浸れる。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

土の香りとぬくもりを感じられる土間。食べ、語り、憩う集いの場となる。
(Photo by 衣笠名津美/Kinugasa Natsumi)

手足を伸ばし、心ほどかれながら眠る。そんな極上のリラクゼーションに包まれる寝室。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

古民家の風情を大切にしながら家具・照明・食器などは新たにデザイン。多数のクリエイターたちのセンスが協奏しながら日貫の歴史と風土に馴染んでいる。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

地元の恵みを自ら料理して味わえる土間、時を忘れてくつろげる居間、虫の音を子守歌にできる寝室、足を存分に伸ばせるヒノキ風呂など、ずっと住んでいたかのようにくつろげる。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

家族や気の置けない仲間たちで集い、思い思いに過ごそう。

『日貫一日』という名には、「朝から夜まで、のどかで美しい日貫で一日をゆっくり過ごして頂きたい」という想いがこめられています。そのため敷地内に掲げられているロゴマークは、「日」と「月」をモチーフにしており、「一日を貫く」イメージで「一」の字を配しています。

このロゴのもとに多くの人々が集い、時代を超えて「日貫」という場所が広く遠くに伸びていく――そんな永らく続いて愛される場を目指しています。

『日貫一日』のテーマは「籠る宿・旅」。何もない、だからこそ豊かさを感じられる邑南町で、思いのままに過ごそう。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

「安田邸」は昭和初期の間取りと工法をのこす、建築当時の田舎には珍しい都会的な建築様式。安田臣氏が当時 都会で流行していた様式を学び、両親の為に設計したという由緒を重んじて、全改修はせずに古い造りがわかる部分を点在させている。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

手ずから料理して味わう、邑南町の新・ローカルフード。

邑南町は農業が盛んで新鮮な野菜がたくさん採れます。さらに日本の豚肉の中で約7%しか流通していない高級豚・ケンボロー種を健康的に育てた「石見ポーク」など、上質なグルメの産地としても知られています。
『日貫一日』では、それらを活かしたオリジナル自炊メニューが食べられます。

これらをディレクションしたのが、京都の名料亭・「草喰なかひがし」の主人を父に持つ中東篤志さん。
日貫の郷土料理をアレンジした鍋や、ウッドデッキで楽しめるBBQなど、自ら食材に触れながら食べるまでの工程やロケーションまで楽しめます。

自炊メニューの夕食は3種あり、 「へか ‒日貫伝統 すき焼き‒」、「野菜たっぷり石見ポークの鉄板焼き」、「石見ポークのスペアリブ」から選べる。
各メニュー 1名3,000円。
(以下、料理と野菜の写真はすべてPhoto by 衣笠名津美/Kinugasa Natsumi)

朝食メニューは邑南町出身の料理家・月森紀子さんが考案。
日貫と邑南町のヘルシーな野菜や、地元の高校生たちが作っている『矢高みそ』を使い、日貫のお母さんたちが手作りしてくれる。

朝食はフロント棟の「一揖」にて、やはり日貫の焙煎所でスタッフ自ら焙煎した豆を使ったコーヒーと一緒に供される ※別料金
(Photo by 衣笠名津美/Kinugasa Natsumi)

農業が盛んで新鮮な野菜に恵まれた邑南町だが、中でも家庭の畑で採れる‟おすそ分け野菜”の新鮮さと安全性は格別! 家族が食べるために作られた安全・安心な野菜の滋味を堪能できる。
(Photo by 衣笠名津美/Kinugasa Natsumi)

日中は気ままに過ごすのもよし、日貫の自然や伝統文化を体感できる「体験メニュー」に参加するのもよし。
(Photo by 衣笠名津美/Kinugasa Natsumi)

人と人との関わりが山里に活気を呼ぶ。

『日貫一日』は貴重な古民家を再生して、地域の‟にぎわい拠点”とすることを目指しています。空き家の活用を通じて日貫の人々とゲストとの交流を深め、日貫に関わる人々を増やしていきたい――そんな願いで営まれています。

以前より「田舎ツーリズム」が盛んで、民泊も6件あった日貫。そんなホスピタリティあふれる山里で、心洗われるような休日を過ごせます。

『日貫一日』は地域おこしから生まれた宿。そのため地域全体でゲストを歓迎してくれる。
「お客様にゆったり過ごして、豊かな時間を堪能して頂きたい」
「邑南町のお母さんやお父さんに、訪れる人々と交流して活力を得てもらいたい」
「若者に胸を張って誇れる町だと知って欲しい」
そんな多くの想いがこめられたプロジェクト。
(Photo by 川瀬一絵/Kawase Kazue)

そして宿泊棟は、今後も2棟、3棟と増やしていく予定だそうです。

「どの建物に泊まろうかな」
「次に来たときはこちらの建物にしてみよう」

といった、選ぶ楽しさや再び訪れる愉しみを演出していきます。

また、『日貫一日』のプロジェクトに関わったクリエイターたちとのコラボ企画も検討中。例えば『泊まる美術館』など、内部に作品を配して特別な宿泊体験となるような企画を練っています。

新たな愉しみと癒しを提供し続けるべく、『日貫一日』は今後も進化し続けていきます。

「安田邸」のウッドデッキから望む日貫の風景。わけもなく涙が出てきそうな、そんな郷愁が呼び起こされる。
(Photo by 衣笠名津美/Kinugasa Natsumi)

澄んだ空気、清らかな水、静かにささやきかけてくる自然の音律。そんな忘れかけていたすべてが「何もないのにここにある」。
(Photo by 川瀬一絵/Kawase Kazue)

時間の贅沢さと「食」の大切さを再発見!
明日への活力をつちかって、新たな自分を見出そう。
(Photo by 太田拓実/Ota Takumi)

- DATA
日貫一日

HPhttps://hinuihitohi.jp
住所:島根県邑智郡邑南町日貫3376

電話:090-3632-4902
チェックイン:14:00~19:00
チェックアウト:8:00~11:00
料金:1泊1名 15,000円、4~12歳 7,500円
※1名様での宿泊料金は20,000円
※朝食付 / 夕食は別料金(各メニュー1名 3,000円)

取材協力・写真提供:太田拓実氏,衣笠名津美氏,川瀬一絵氏,日貫一日/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら

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