2019年5月30日  -  名所 / 史跡・遺跡

名所 / 史跡・遺跡

【石見銀山/大田市】 世界遺産に登録された、日本で唯一の “鉱山遺跡”。

人と自然が共存してきた「産業遺跡」であることが、世界遺産 登録への大きな原動力となった。鉱山跡でありながら豊かな緑が残る景観は、世界的にも珍しい。

かつて世界中に銀を供給して、経済・文化の交流を生み出してきた銀鉱山。

大航海時代の16世紀から17世紀。世界中に名をはせていた高純度の銀がありました。
それは世界遺産・『石見銀山(いわみぎんざん)』で産出されていた銀。最盛期には、なんと世界中の約3分の1の銀が日本産で占められていたといい、さらに、その大半が『石見銀山』産だったとも言われています。

『石見銀山』の銀は、東アジアを経てヨーロッパにまで流通。そのため東洋と西洋の交易や交流が盛んになり、様々な恩恵までもたらしました。

1527年の発見以来、約400年間にも渡って銀を産出。その際立った品質と純度によって、「東アジア交易において最も信頼性が高い銀」として名をはせた(御取納丁銀/弘治3年(1557年)に毛利元就が正親町(おおぎまち)天皇の即位を祝って献上したもの)。

大江高山火山群の火山活動の恵みによって銀が生まれ、それを自然と共存しながら採掘することで、人々の暮らしも成り立ってきた。深い山あいに佇む町並みは、その共生の歴史を物語っている。

人と自然との共生を象徴する、他に類を見ない「産業遺跡」。

大田市の観光ブランドコンセプトは「自然に宿る力とともに~永遠の中の一瞬に気づく旅~」。
そのフレーズの通り、石見銀山とその周辺の自然は、世界に名をはせた鉱山の遺跡とは思えないほど豊かです。

実は、これこそが『石見銀山』が世界遺産に登録された大きな理由のひとつ。
ふつう、鉱山は重金属を含んだ廃液などの流出や、精錬に必要な木(薪)の伐採などによって、周辺の環境を大きく変えてしまいます。ですが『石見銀山』は、「灰吹法」という先進的な技術や、山の木を伐採したら植樹を行うなどの努力によって、自然と人との共存を実現。そのため今にまで残る美しい景観を誇り、以下のような長所とともに評価されたのです。

  1. 世界的な経済と文化の交流を生み出した
  2. 銀の生産工程が全部人力かつ手作業で、その技術を示す史跡も豊富に残っている
  3. 生産から出荷までの全ての過程が明らかになっている

以上のような理由によって、「石見銀山遺跡とその文化的景観」の全てが世界遺産として認められました。その稀有(けう)な成り立ちと歴史的な意義を感じながら、今も多く残る史跡をたどってみましょう。

銀の採掘と交易によって多彩な文化・技術・史跡などが生まれた。

散策の前に予習して、よりディープに『石見銀山』を堪能!

まず最初に訪れてみたいのは、『石見銀山』の歴史をより深く知るためのミュージアムです。
『石見銀山』の成り立ちや意義、銀の採掘や精錬の技術、鉱夫や周辺の人々の暮らしぶりなどが、多数の資料や模型・人形などでわかります。
ただ見て回るよりも、はるかに『石見銀山』とその歴史への理解が深まるので、他の名所を訪ねる前にぜひ予習しておきましょう。

石見銀山世界遺産センター

有料展示室内には、再現ジオラマや遺跡調査で採掘された埋蔵品などが展示される。

有料展示室内 「吹屋」の再現模型。

『石見銀山』のガイダンス施設として、その歴史的な価値や見学方法などを、ビジュアルな展示でわかりやすく解説。
限定ツアーのみで公開されている最大級の坑道・「大久保間歩(おおくぼまぶ)」のVR(バーチャル・リアリティー/仮想現実空間)映像の上映や、「丁銀(昔の貨幣)」を造る体験(低融点合金使用)なども行われているので、銀山の暮らしや文化をよりリアルに体感できます。

石見銀山資料館(大森代官所跡)

石見銀山に伝わってきた歴史的な資料や道具、貨幣などをもとに、世界に誇る銀山を支えた人々の仕事や暮らしぶりなどを解説する資料館。
江戸時代 この地に置かれた代官所は、八代将軍・吉宗公の治世に起きた「享保の大飢饉」から、石見銀山を中心とする幕府の直轄地(天領)の民をさつまいもの普及によって救った“いも代官”井戸平左衛門の居所でもありました。
1815年に建てられた築200年を超える「表門」と「門長屋」は、貴重な歴史の語り部です。

●大森の町並み

『石見銀山』のお膝元・大森町の歴史的な町並みです。
『石見銀山』で働いていた鉱夫や、彼らを取り仕切っていた幕府の役人、交易で訪れる人々などが行き交っていた町並みは、今でもひょっこり彼らが現れそうな臨場感があります。

銀山とその周りの天領を治めていた「代官所」を中心に、武家屋敷・商家・寺社仏閣などが連なる景観は、文化庁の “重要伝統的建造物群保存地区” に選定されています。

注意したいのは、『石見銀山資料館』から『龍源寺間歩(りゅうげんじまぶ)』へと至る約3.1kmの町並みは、徒歩かレンタサイクルが主な観光手段となっていること。
貴重な町並みと静かな環境を守るために “パーク&ライド” が実施されているので、まずは『石見銀山世界遺産センター』に駐車して、路線バスで現地に向かいましょう。

なお、以下の3ヵ所で “レンタサイクル” を借りることもできます。

<石見銀山公園 付近>
●石見銀山 大森観光案内所
●貸自転車弥七

<大森代官所跡 付近>
●レンタサイクル河村

・電動自転車:2時間 700円
・普通自転車:3時間 500円
※延長は追加料金がかかります
※悪天候の場合は貸出できない場合があります

さらに、石見銀山公園にはベロタクシー(エコな自転車タクシー)も待機しています。
※全車が出かけていて不在の場合もあります

ベロタクシー
※料金はコースと人数によって異なります

足や体力に自信のない方は、これらを利用すると良いでしょう。
ベロタクシーは電話かメールで予約することもできます。

あなたに最適な足を確保したら、いよいよ『石見銀山』の見どころを巡ってみましょう!

龍源寺間歩(りゅうげんじまぶ)

銀を採掘していた坑道の跡です(間歩は坑道の意味)。
『石見銀山』に900以上も存在する間歩の中で、常に一般公開されている唯一の間歩。壁には人の手で穿(うが)たれたノミの跡が無数に残っています。
約600mもの長さのうち、公開されているのは273m。地下から湧き出る水を流すために掘られた約100mもの竪坑(たてこう/ほぼ垂直に掘り下げられた坑道)や、銀山の歴史を物語る絵巻などの展示もあり、銀を掘るための途方もない労力を実感できます。

大久保間歩(おおくぼまぶ)

大久保間歩で公開されている広大な採掘跡 「福石場」。

やはり銀が採掘されていた坑道で、その規模は『石見銀山』最大級です。
初代奉行の大久保長安が槍を持って馬に乗りながら入った、という伝説が残っているほど巨大で、最も高い部分は約20m。自然銀が含まれる鉱石が採掘されていた「福石場」など、見どころたっぷりです。
予約制のツアーでのみ入場可能なので、気をつけましょう。

ツアーの問い合わせ:大久保間歩予約センター 0854-84-0750

五百羅漢(ごひゃくらかん) と 羅漢寺

観光案内所(石見銀山公園内)の近くにある、501体もの羅漢(らかん/仏教において供養と尊敬を受けるに値する人物の意味)をお祀りした岩窟と、その供養を行っているお寺です。銀山の労働で亡くなった人々や、大森町の人々の祖先を供養するために、25年もの歳月をかけて1766年に完成しました。
「501体の羅漢の中には必ず懐かしい人々に似た顔が見られる」と言われており、多くの人々が参拝しています。

熊谷家住宅(くまがいけじゅうたく)

約5万石の石見銀山領(天領)の中で、最も栄えていた御用商人の邸宅です。
代官所に納められる銀を管理する御用掛屋(かけや)や、代官所の御用達を務めていたほか、郷宿(代官所を訪ねてくる役人のための宿)も営んでおり、当主は代々大森町の年寄(町役人の筆頭)にも就任していた名家でした。
約30もの部屋と5棟の蔵がある邸宅は、国の重要文化財に指定されています。

旧河島家(きゅうかわしまけ)

代々「銀山附役人」を務めて、そのトップの「組頭」にまで出世した武士の邸宅です。
19世紀初頭に建てられた建物は、江戸時代の「銀山附役人」の屋敷の特徴をよく表しています。

城上神社(きがみじんじゃ)

出雲大社と同じ大物主命(大国主命)をお祀りする、『石見銀山』の初代奉行・大久保長安の遺物などが納められた神社です。出雲大社は新たなご縁を結んでくれますが、こちらは今あるご縁を大切に育んでくれるそうです。

また、拝殿の鏡天井(格縁(ごうぶち)などがない、平面に板を張って鏡のように仕上げた天井)には、極彩色で描かれた「鳴き龍」があります。その真下で手を叩くとリンリンという龍の鳴き声のような音が鳴り響き、不思議な感覚に包まれます。
一度は焼失したものの、1812年に再建された社殿は、屋根が二重になった「重層式拝殿」が特徴。“島根県指定有形文化財(建造物)” となっています。

●清水谷製錬所跡

明治28年に造られた、当時の先端技術による銀の製錬所の跡です。
設計上の問題があったり、予想よりも質の悪い鉱石しか出なかったりしたため、わずか1年半ほどで廃業しました。

「ワンコインガイド」でもっとディープに『石見銀山』を知ろう!

他にも様々な名所や史跡などがありますが、これらをより興味深く巡るには、ガイドさんの解説付きの「ガイドウォーク」がおすすめです。
下記の2種類があり、いずれもワンコイン(大人 500円 / 小人は無料)というお手軽さ。『石見銀山』に来たならぜひ参加してみましょう。

●龍源寺間歩 定時 ワンコインガイド
●大森の町並み 定時 ワンコインガイド
予約・問い合わせ:0854-89-0120(石見銀山ガイドの会
※1ヶ月前から予約可能

ガイドウォークには、銀の交易で賑わった「銀山街道」を巡るコースや、鉱山遺跡が散在する山歩きのコースなどもある(日時・料金・経路などは要問合せ)。
たっぷり時間をかけて、往時の銀山の息づかいを偲んでみよう。

“銀の積み出し港” 温泉津(ゆのつ)で、湯の華舞う名湯に浸ろう!

世界遺産となった「石見銀山遺跡とその文化的景観」は、これだけではありません。
「銀山街道」と呼ばれた「鞆ヶ浦道(ともがうらどう)」を経た「鞆ヶ浦港」や、「温泉津沖泊道(ゆのつおきどまりどう)」を経た「温泉津港」と「沖泊港」も、その歴史と交易において、大きな役割を担ってきました。

中でも「沖泊港」がある『温泉津』は、今も温泉街として多くの人々に親しまれています。
非常に評価の高い温泉もあるので、散策の汗を流したり、観光の拠点とするのも良いでしょう。

温泉津の町並み

大正時代の風情あふれる建物などが残る温泉津の町並み。

『石見銀山』の “積み出し港” として栄えた港町で、その名の通り、良質な温泉で知られる湯治場でもあります。
赤茶色の湯の華が踊るにごり湯は、多数の効能で知られる名湯! この温泉を目当てに訪れる人も少なくありません(日帰り温泉2ヵ所あり)。

さらに、昔ながらの建物が立ち並ぶ温泉街は、『石見銀山』のお膝元・大森町と共に “重要伝統的建造物群保存地区” に選定されています。石見地方 特有の赤い瓦(石州瓦)がふかれた家々も、ノスタルジックな旅情を誘ってくれます。

この他にも、銀山の近くには全国的な人気を誇るライフスタイル・ブランド『群言堂』や、銀のアクセサリーを買ったり作ったりできるショップ、鉱夫達が食べていたお菓子・『げたのは』を作り続けているお菓子屋さんなどがあります。

さらに遠方から足しげく通うファンが多いドイツパンのお店や、イタリアンのお店、ゴマ豆腐のお店や古民家カフェなども多数。
『石見銀山』という唯一無二の世界遺産は、その景観や歴史に魅せられた人々によって、新たな風も生み出しつつあります。

古くて新しい、人と歴史の流れが生まれ続ける場所。
その貴重な風景を守り続けるために、電柱を地下埋設式にしたり、町の人々が日々ゴミ拾いや清掃に励むなど、今も「自然と人との共生」が続いている。

- DATA
石見銀山

HP:https://www.ginzan-wm.jp/
住所:島根県大田市大森町イ1597-3

※パーク&ライドの拠点・『石見銀山世界遺産センター』の住所

観光のお問い合わせ:0854-88-9950(大田市観光協会)
営業時間:8:30~17:00(大田市観光協会)
休日:日曜・年末年始(大田市観光協会)

※各施設・交通機関・ガイドツアー等の営業時間や料金は、それぞれのHPや観光案内所・ガイドマップ等でご確認ください

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