2020年2月10日  -  観光施設 / 美術館・博物館

観光施設 / 美術館・博物館

【出雲民藝館/出雲市】「用の美」を漂わせる素朴な“日常の道具”の魅力を知る。

日々の暮らしに欠かせない「日常の道具」の美しさや、無名の職人たちの手技から生まれた芸術性を伝えるために作られた「民藝(みんげい)品」の博物館。
陶磁器・漆器・木工品・染織物など、島根県を中心に全国各地から集められた品々が展示されている。

古来の手仕事が生み出した素朴な美。

「民藝品」。聞き慣れない言葉ですが、古来、常に日本人の側にあった「日常の道具」に贈られた言葉です。

無名の職人たちが日々手仕事に励むことによって、機能性と美しさを兼ね備えた「用の美」が生まれる――それを備えた品々を「民藝」と定義して、思想家の柳宗悦(やなぎ・むねよし)氏が1926(大正15)年から提唱し始めました。

その種類は焼き物・織物・染物・木工品・建築など、実に多岐にわたります。そうした「民藝品」を収集して“民藝の聖地”とも呼ばれる島根で展示したのが、この『出雲民藝館』です。
今も多くの「民藝品」が残り、生み出され続けている島根で、その魅力を教えてくれます。

出雲大社から車で約15分。閑静な住宅街に現れる森閑とした空間。
(藍染とはんどう(主に石見地方(島根県西部)で使われていた生活用水を貯めるための大がめ)

無名の職人たちが作り、庶民の暮らしを支えてきた「日常の道具」は、自然で素朴な美しさを帯びる。それを評価して広めたのが、柳氏らが行なった「民藝運動」だった。 ほかにも陶芸家の濱田庄司氏、日本育ちのイギリス人芸術家バーナード・リーチ氏らが賛同し、全国各地で啓蒙活動を行なった。
(出雲地方の開墾鍬と備中鍬)

「民藝」の精神を現代と未来に伝える。

『出雲民藝館』は、「民藝」の美しさと精神を世に伝えることを目指して、昭和49(1974)年に開館しました。出雲地方きっての豪農「山本家」の邸宅を改修した展示棟と敷地は、大きく以下に分かれています。

●長屋門 / 敷地の入り口にそびえる門
●本 館 / 元・米蔵の建物を改修した展示棟
●西 館 / 元・木材蔵の建物を改修した展示棟
●売 店 / 長屋門に付属した「民藝品」の売店

さらにこれらの奥には、今も山本家の邸宅として使われている「母屋」がたたずんでいます。これら全てに高い歴史的価値があり、それ自体が優れた「民藝品」でもあります。

長屋門。徳川吉宗の時代・延享3(1746)年に出雲大社を造営した棟梁によって建てられた。築270年超の威厳は格別で、駐車場から門に至るまでの壁に囲まれた道もなんとも言えない風情が漂う。

長屋門をくぐると現れる母屋。豪農の歴史と格式を感じさせるたたずまい。
※私邸につき内部は非公開

『出雲民藝館』の建物は、「民藝」の趣旨に感銘を受けた山本家から寄付されたものです。
その質実剛健な建築と、華美な装飾のない質素な内装からは、歴代の山本家の堅実な暮らしぶりと、出雲の風土に根ざした大工や左官たちの職人技がうかがえます。
そんな建物自体の価値と意義にも注目しながら、島根と全国から集められた「民藝品」を鑑賞しましょう。

『出雲民藝館』の展示物は、いずれも華美な装飾品や奇をてらった趣味品ではない、庶民の暮らしの中で役立てられてきた「日用品」です。
その種類は陶磁器・漆器・木工品・染織り物など実に多彩。優れた職人技が息づく島根の「民藝品」を中心に、全国各地のわざものがそろっています。

単に骨董品を収集・鑑賞する場ではなく、人々の暮らしに生かされてきた「道具」の良さを知る場。それらの素朴な美しさに見入ると共に、そのような「用の美」と共にあったかつての暮らしを知ることもできます。

本館 ~ 島根の民窯(みんよう)と染織物を知る ~

明治12(1879)年に建てられた米蔵を改装した建物で、今は貴重となった巨大な梁(はり)が見事です。
床には出雲地方特産の石材「来待石(きまちいし)」が敷き詰められており、かつては3,000俵もの米俵が収められていた空間に、島根の窯元の陶磁器や、藍染・木綿絣(もめんがすり)等の布製品、木工品などの道具を展示しています。

作られた時代は江戸時代末期~昭和初期にかけてが中心で、今も連綿と続く島根の「民藝」の源流がうかがえます。

主な展示物である島根の陶磁器は、庶民の生活用具を作る「民窯(みんよう」のものが中心です。
明るい黄色の釉薬(ゆうやく/焼き物に掛けるうわぐすり)が特徴の「布志名焼(ふじなやき)」や、より素朴で庶民の暮らしに寄り添ってきた石見地方(島根県西部)の「石見焼(いわみやき/複数の窯元があり)」など、「民藝」と「民窯」好きなら見逃せない充実ぶりです。

地元ならではの希少な品々を見て、島根の「民藝」の歴史に想いをはせてみましょう。

西館 ~ 出雲の庶民の暮らしと伝統工芸を知る ~

明治中期に建てられた木材蔵を改装した建物で、こちらには、より近代の「民藝品」が並びます。
展示物は出雲地方のものが中心で、柳氏らの「民藝運動」の影響を受けた職人の手仕事が多く見られます。

中でも「民藝運動」の旗手・河井寛次郎氏に絶賛されながらも途絶えてしまった出雲の「大津焼」は必見! 昭和50年代まで続いた窯元で、素朴な素焼きの生活用具は当時の暮らしと文化を偲ばせてくれます。

「大津焼」の釣鐘火鉢と焙烙(ほうらく/素焼きの土鍋)。

ほかにも、庶民の暮らしを日々支えてきた農工具などを展示。
出雲大社ゆかりの「大社の祝凧(いわいだこ)」、出雲の伝統的な婚礼に欠かせない嫁入り道具・筒描藍染(つつがきあいぞめ)の布物など、出雲の風土に根差した「民藝品」であふれています。

個性豊かなこれらの品々は、それらを使っていた人々の姿まで想起させてくれます。

売店 ~ “民藝の聖地”ならではの掘り出しものが多数! ~

巨大な長屋門の一角にある「民藝品」の売店です。
今も島根と全国で守り伝えられている「民藝」のわざものを、様々に取りそろえています。

アイテムは陶磁器を中心に、和紙・木工品など。特に島根と鳥取の「民窯」の作品は見逃せません。
2016年に松江のセレクトショップ『objects(オブジェクツ)』のプロデュースでリニューアルされた、古来の「民藝」に敬意をはらった充実の品ぞろえが好評です。

全国から集めた選りすぐりの品々もあり、民藝に関する書籍も扱っているので、「民藝」マニアも、初めて「民藝」に触れて興味を持った人も大満足です。
注:支払いは現金のみ

売店の品々。「民藝」通もうなる質の高さと品ぞろえ!

全国の「民藝」も企画展などで紹介!

さらに『出雲民藝館』では、全国各地の民藝館などの協力によって、質の高い企画展やワークショップなどを開催しています。

現在行われているのは、2020年春までの特別展「武内晴二郎展」。
岡山県の倉敷市を拠点としていた陶芸家・武内晴二郎氏(1921~1979)の作品展です。

竹内氏は、型物(ろくろで成形せずに型にはめて作る陶磁器)を中心に、スリップ(土に水を加えたクリーム状の化粧土等による装飾)や、型押し・象嵌(ぞうがん/素地に別の素材をはめこむこと)・練上(色が異なる粘土を組み合わせて模様や形を作ること)などなど、多くの技法を駆使した魅力的な作風で知られています。

重厚な存在感を漂わせながらも、モダンなセンスが光る作品は必見です。
「民藝」の世界に多くの影響を与えた竹内氏の作品を、没後40年の節目を機に振り返る注目の展覧会です。

●特別展「武内晴二郎展」
会期:2019年9月13日(金)〜2020年4月5日(日)
休館日:月曜(祝祭日の場合は翌日)
開館時間:10:00-17:00(入館は16:30まで)
展示会場:出雲民藝館 本館
観覧料:大人700円(600円)・小人300円(200円)
※()内は20名以上の団体料金
※出雲民藝館入館料を含む


竹内氏の作風を、「民藝運動の父」と呼ばれる柳氏は「正しい眼とこもる心の仕事である」と評価。
さらに柳氏の同志の濱田庄司氏は、「手で作ったというより眼で作ったと言いたい」「立派に新しい道を見せてくれました」などと絶賛した。

展示物は、竹内氏の作品を最も多く収蔵する『大阪日本民芸館』から借り受け。さらに竹内家から借り受けた氏の来歴や作風についての貴重な資料も見られる。

無名の職人たちの仕事の中に、それまで評価されることのなかった美を見出して光を当てた「民藝」という概念。
今も日本各地に息づく素朴で堅実な職人技に、抒情豊かに触れることができます。

- DATA
出雲民藝館

HP:http://izumomingeikan.com/
住所:島根県出雲市知井宮町628

電話:0853-22-6397
営業時間:10:00~17:00(入館は16:30まで)
休日:月曜(祝祭日の場合は翌日)・年末年始
入館料:大人500円(400円)  小人100円(80円) 
※()内は20名以上の団体料金

※写真提供:出雲民藝館/無断転載禁止

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