2019年12月30日  -  観光施設 / 美術館・博物館

観光施設 / 美術館・博物館

【モニュメント・ミュージアム 来待ストーン/松江市宍道町】「出雲の国」を支え、発展させてきた貴重な石材『来待石』を知る!

宍道町(しんじちょう)来待(きまち)地区の周辺で採れる「来待石(きまちいし)」の歴史と文化を、実物を含めた展示と資料で紹介しているミュージアム。
古来の技術を受け継いだ匠たちの技や、来待石で作られたオブジェなどが見られるほか、彫刻・陶芸などの体験もできる。来待石とそれが生み出した文化や習俗に触れて、出雲の人々の暮らしを知ろう!

常に人々の暮らしの中にあった身近な石。

来待石とは、1400万年前の火山灰と砂が堆積してできた「凝灰質砂岩(ぎょうかいしつさがん)」です。
質が一定で柔らかく、採掘や加工などがしやすいことから、古くは古墳時代の石棺に使われたほか、江戸時代には「御止石(おとめいし)」と呼ばれて、松江藩の許可なしでは販売できなかったほど珍重されていました。
また、生活用具や建材などにも重宝されて、出雲の人々の暮らしを支えてきました。

さらに、出雲の伝統的工芸品「出雲石灯ろう」の原材料や、石州瓦(せきしゅうがわら/島根県西部 特産の瓦)の釉薬(ゆうやく/焼き物を焼く時にかける“うわぐすり”)などにも使われて、島根の暮らしに無くてはならない存在となっていきました。

そして現代でも、優れた浄化作用を持つゼオライト※ が約30%も含まれている点や、反対に熱に弱い石英の含有率が少なく、耐火性に優れている点などから、建材として見直しが進んでいます。

※ゼオライト(沸石/ふっせき)
多孔質(穴がたくさん開いた構造)で、他の物質や気体を吸着する作用が強く、土や水の中に存在するホルムアルデヒド・アンモニア・リン等の有害物質を軽減する働きがある。そのため環境浄化の目的でも使用される。
さらに水の中の有機物質を除去する効果もあるため、観賞魚の水槽の濾過材などにも使われている。

『来待石』の石切場の跡を含む博物館の全景は、平成8年度の「第4回 しまね景観大賞」に選ばれた。

暮らしのあらゆる場面を支えてきた、万能の石材。

このように、古くから人々の暮らしを支えてきた『来待石』ですが、その用途は時代とともに変化してきました。『来待石』の歴史を知れば、出雲の歴史の流れと、文化の発展をも知ることができます。

【来待石の用途の変遷】

●古墳時代
古墳の石棺(貴人を埋葬したひつぎ)や、石室(石棺を納めた部屋)の材料

●中 世
石仏、石段、敷石、石垣、石塔、ほか

●江戸時代
建材、灯ろう、狛犬(唐獅子)、石州瓦や石見焼(いわみやき/島根県西部 特産の焼き物)の釉薬、竈(かまど)、掘炬燵(ほりごたつ)、井戸の枠、石臼(いしうす)、手水鉢(ちょうずばち)、松江城の石段や水路、ほか

●現 代
・出雲石灯ろう
庭園や神社、お寺などに置かれる照明で、1976(昭和51)年に石製品としては初めて経済産業大臣(当時は通商産業大臣)指定の「伝統的工芸品」に認定された。
温かみのある柔らかな肌合いと美しい色彩を持ち、早く苔むして趣(おもむき)ある色に変わるため、庭や室内用の「石の美術品」として好評。

・ストーンライト(照明)
庭園、ベランダ、玄関、室内などに置く照明器具。玉造温泉を流れる玉湯川の岸や、宍道駅などにも設置されている。現代の暮らしに合ったモダンなインテリアやモニュメントとして人気。

・建 材
外壁や床材など。2018~2019年に行われた松江市内の大橋川の護岸工事にも使われたほか、松江歴史館前の敷石、松江地方合同庁舎前を流れる大橋川の護岸敷石にも採用された。

・如泥石(じょでいいし)
江戸時代の木工家・小林如泥(こばやしじょでい)が考案したと言われる円柱形の波止石(なみどめいし/海岸から海に突き出すように設置して波を防いだり、船に荷物を積む足場などにした石)。
出雲では、宍道湖の嫁ヶ島やその周辺の沿岸などに設置されており、テトラポット的な役割を果たしている。
『来待石』が含むゼオライトによる浄化作用があって、苔や水草などの植物が生えやすいため、水辺の生物に適した環境も造り出せる。また、景観としても風情があって美しい。

・その他の用途
彫刻(石仏・狛犬・ウサギ・タヌキ・カエルなど)、置物(ミニ石灯ろうなど)、ピザ窯、金魚鉢、ペットの墓石、バードバス(小鳥用の人工的な水浴び場・水鉢)、ほか

文化が発展して歴史が移り変わっても、常に人々の隣に寄り添ってくれる『来待石』(博物館の奥にある古い石切場の跡/見学可能)。

『来待石』を見て、触れて、感じよう!

こうした来待石の歴史や特性を知ったら、次は実際に見たり、触れたりしてみましょう。
『モニュメント・ミュージアム 来待ストーン』は、以下3つのエリアで構成されていて、場所によって様々な体験ができます。

●石の広場 ~ 屋外に展示された『来待石』のモニュメントや、彫刻、実際に採掘されていた採石場の跡などを見学できる
●博物館(ミュージアム) ~ 『来待石』の歴史や文化を紹介
●体験工房・陶芸館 ~ 『来待石』の彫刻や、『来待石』から作られた釉薬を使った陶芸などを体験できる

3つのエリアをじっくり巡れば、出雲の発展に大きく貢献した『来待石』を、より深く知ることができます。

石の広場 ~ 『来待石』を見て・触れる ~

『来待石』が採掘されていた「石切場」の跡と、『来待石』で造られた彫刻・置物などが見られる迫力のエリアです。
見て、触れて、感じることで、『来待石』の優れた性質と人々の暮らしの中でどう活かされてきたかが分かります。

①石のトンネル

『来待石』の岩盤を貫いたトンネルで、駐車場と博物館とを結んでいます。長さ約65m・幅約4mもあるトンネルをくぐり抜ければ、石の広場(石切場の跡)に到着!

②来待石 採石場跡 (石の広場)

石のトンネルをくぐり抜けた先にある、「三才谷の大岩(みさいだにのおおいわ)」と呼ばれていた採石場の跡です。絶壁の高さは約25mもあり、そこに斜めに広がっているスジ模様は、マサカリ(つるはし)を使って石を切り出した際の手掘りの跡です。

この採石場は、1892(明治25)年頃~1955(昭和30)年頃までの約60年間、10軒の採石業者によって営まれていました。
また、「石の広場」全体は結婚式場として利用されることもあり、演奏会場・演劇舞台などにも利用可能です(要お問い合わせ・予約)。

③出雲狛犬(出雲唐獅子)

実際に神社に置かれていた狛犬を、新しいものと交換した際に移設したもの。座った像は「居獅子(いじし)」、四つ脚で身構えた像は「勇獅子(いさみじし)」と呼ばれています。

④真実の口

名前に「来るのを待つ」という由来がある『来待石』で作られた、タヌキの顔をかたどった「真実の口」。口に手を入れて願い事を唱えれば、待ち人が来たり、良いご縁があると言われています。
松江の縁結びスポットのひとつで、女性やカップルに人気です。

博物館(ミュージアム) ~ 『来待石』の歴史と文化を知る ~

迫力満点の屋外展示を楽しんだら、次は「博物館(ミュージアム)」に入ってその歴史と文化を学んでみましょう。
ここでは歴史の流れに沿って、『来待石』が人々にどう利用されて、どんな物に加工されてきたかを紹介しています。
出雲の人々と『来待石』との関係を知って、古代から続く絆に想いをはせてみましょう。

①導入部
博物館と同じ宍道町にある、「下の空古墳」の石室の復元模型などを展示。

②『想う』 来待石のあゆみ
来待石が出雲の人々にどう利用されてきたのかを、時系列に沿って紹介。
(原始・中世・近世・現代・伝統的工芸品として、の5パート)

③『創る』
機械化される以前の採石の様子から、加工の工程までを、「人の手と技」という視点で展示。
昭和40年代の採石作業の再現映像などが見られるシアターや、「出雲石灯ろう」を造る職人の手を型取って作られた製作工程の模型、『来待石』の採石や加工に使われる道具、吹き場(加工の作業場)の再現などが展示されている。

④『遭う』
今は使われていない物まで含めた、暮らしの中の『来待石』製品を展示。
『来待石』が建材に使われている民家のイメージ模型や、生活用具(漬物石・炬燵(こたつ)・竈(かまど)・井戸の枠・石臼(いしうす)・流し台・石見焼きの甕(かめ)と醤油壺)などのほか、松江城の石垣内の排水溝(築城当時のもの)などが見られる。

⑤『探る』
来待石の性質を科学的・地質的な視点から紹介した展示。
来待石が採れる地層「大森-来待層」は、世界的にも貴重な「パレオパラドキシア(約1,300万年前に絶滅した水陸両生の哺乳類で、化石が少ないため「謎の動物」と呼ばれている)」の化石を産出するなど、地質学的にも重要。そのパレオパラドキシアの下顎と肋骨や、ヒゲクジラ・サメの歯・貝の化石などを展示している。

なお、「博物館」では企画展や講演会を定期的に開いて、『来待石』のより深い知識を広めています。また、夜間は石切場跡がライトアップされて幻想的なムードに包まれます(レストランの営業時のみ)。

夜間ライトアップの光景。柔らかな灯りに照らされた採石場の跡や彫刻は、昼間とはまた違った魅力。

「博物館」に併設されたレストラン「Nature(ナテュール)」。島根の食材にこだわったフレンチを気軽に味わえる。ランチ・ディナー・カフェで利用できて、営業時間は11:30~21:30(O.S)。

体験工房の入り口。タヌキや龍などの彫刻が出迎えてくれる。

体験工房・陶芸館 ~ 『来待石』の彫刻や、釉薬を使った陶芸を体験 ~

屋外と屋内の展示で『来待石』の知識を知ったら、次は実際に加工してみましょう!
ここ「体験工房」と「陶芸館」では、以下のような彫刻や陶芸の体験ができます。

【体験工房】

●『来待石』の彫刻体験

実際に職人が使っているものと同じ道具を使って、『来待石』の板石に彫刻する体験。彫ることで、『来待石』の特性をよりしっかり感じられる。

●『来待石』の時計作り体験

『来待石』の板石にアクリル絵の具で絵付けして、オリジナルの時計を製作する体験。

●『来待石』のペンダント作り体験

勾玉、ハート、四角、三角などの『来待石』を選んで、手回しドリルでヒモを通す穴を開け、磨き、飾りを付け、オリジナルのペンダントにする体験。

また、「体験工房」では国の「伝統的工芸品」に指定されている「出雲石灯ろう」の技術の公開と継承も行っています。日曜や祝日には職人の製作実演が見られるので、ぜひ立ち寄ってみましょう。

「体験工房」で展示・販売されている『来待石』の製品。

【陶芸館】

『来待石』が原料の「来待釉薬(ゆうやく)」などを使って、オリジナルの陶芸作品が作れます。あなたならではの一品に仕上げてみましょう!

●陶芸体験

碗、皿、コーヒーカップなどの陶芸作品を製作する体験。(終了後、2ヶ月前後で焼き上げ/受取は来館または着払い発送)。

●絵付け体験

あらかじめ用意されている、焼き上げる前の陶器に絵付けする体験(体験後、2ヶ月前後で焼き上げ/受取は来館または着払い発送)。

『来待石』の文化と、職人の技術の継承を目指して。

『モニュメント・ミュージアム 来待ストーン』は、宍道町が松江市に統合される前、1989(平成元)年に地域振興の一環として計画がスタートしました。
そして平成8(1996)年4月20日に完成し、『来待石』の振興と新規事業の創出、職人の後継者の育成、『来待石』を生かした生涯学習などを推進するために、それらの中核施設として営まれてきました。

そして現在。時代に即した新商品や、新素材・新技術などの開発にも力を入れて、『来待石』市場の拡大と文化・観光の振興などを目指して活動しています。

さらに2017(平成29)年には、大地の遺産を保全して教育やツーリズムに活用しつつ、持続可能な開発を進める地域認定プログラム『日本ジオパーク』に認定された「島根半島・宍道湖中海ジオパーク」のジオサイト(ジオパーク内における見所)としても注目されています。

出雲の歴史と常に共に歩み、今も人々の暮らしを支えている『来待石』。そんな出雲の“縁の下の力持ち”に、ぜひ触れてみてください。

出雲の歴史や文化に深く関わってきた、“地域の宝”とも言える石。

ミュージアムショップでは『来待石』のお土産や置物なども販売。「ミニ出雲唐獅子(出雲狛犬)」、「ミニ雪見灯ろう」など、伝統的なのに新しく可愛い一品に出会える。

- DATA
モニュメント・ミュージアム 来待ストーン

HP:https://www.kimachistone.com
住所:島根県松江市宍道町東来待1574-1

電話:0852-66-9050
営業時間:9:00~17:00(最終入館16:30)
休日:毎週火曜(祝日の場合は翌平日)・年末年始
※陶芸館は火・水・木曜日
料金:390円(博物館 一般入館料) 190円(博物館 小中学生料金)
※その他の各種体験は別途料金要(HPをご参照ください)

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