2019年5月25日  -  名所 / 神社・寺院

名所 / 神社・寺院

【美保神社/松江市】漁師・商家・音楽家などの厚い信仰を集める「えびす様の総本宮」。

全国に3,385社ある、えびす様をお祀りする神社の総本宮。創建された年が定かでないほど長い歴史を持つ。

福々しい笑顔の「えびす様」をお祀りする、日本の始まりとも深い関わりを持つ神社。

島根半島の先、夜明けの光を鮮やかに受ける「美保関(みほのせき)」に、海と商売と音楽と学業の神様・えびす様(事代主神/ことしろぬしのかみ)を祀る『美保神社』があります。

日本の始まりを記した「国譲り神話」においても、大役を果たされたと伝わる重要な神様。
さらに父神である大国主神(おおくにぬしのかみ)の御后・三穂津姫命(みほつひめのみこと)も祀られており、高天原(たかまがはら/天上)から稲穂を持って降臨し、人々に食料として広めたとの神話によって、五穀豊穣・夫婦和合・安産・子孫繁栄のご利益でも知られています。

えびす様は父神・大国主神の領土であった地上を「天照大神(あまてらすおおみかみ)の子孫に譲るべきかどうか」とのご相談を受け、決断を下された神様でもある。そのため『美保神社』と大国主神を祀る『出雲大社』を「両参り」することで、一層のご利益があると言われる。

えびす様は鯛と釣竿を手にして優しい笑みを浮かべた「福徳円満」の神様。
『美保神社』の御守りは、そのえびす様のシンボルである鯛が、もう一柱の御祭神である三穂津姫命のシンボルの稲穂をくわえた、めでたくも愛らしい図柄となっている(昇運鯛守/初穂料 ¥1,000)

えびす様と三穂津姫命を祀る「本殿」。他では見られない独特な造りに目を奪われる。

歴史の風格が漂う「美保造り」の本殿。

『美保神社』を訪れたら、まずはその重厚かつ壮麗な建築に注目してみましょう。

特に目をひくのは、社殿の最も奥に位置する「本殿」。
「美保造(みほづくり)」または「比翼大社造」と呼ばれる、全国でも非常に珍しい形式で、「大社造」という神社の本殿の様式を左右に並べ、さらにその二殿の間を「装束の間」でつないだ造りになっています。向かって右側の「左殿」に三穂津姫命を、左側の「右殿」にえびす様(事代主神)をお祀りしています。

※神社における左右は神様から見た位置となるため、参拝者から向かって右側が「左殿」・左側が「右殿」となります

現在の「本殿」は、寛政12年(1800年)の「美保関大火」によって焼失した後に、松江藩主の寄進によって文化10年(1813年)に再建されたもの。築200年以上にもなる貴重な建築は、国の重要文化財に指定されています。

『美保神社』自体が創建された年は不明ですが、境内から古墳時代の勾玉などが発掘されていることから、その起源は大変古いことが伺えます。

奥が「本殿」、手前が「拝殿」。

海の神であり、音楽の神でもあるえびす様への崇敬を表した「拝殿」も、『美保神社』ならではの独特な造り。

名だたる建築学者の設計による「拝殿」も見事。

次に注目したいのは、参拝者がお参りする『拝殿』です。
こちらは昭和3年(1928年)に建てられたもので、明治神宮や築地本願寺などを手がけた建築学者・伊東忠太氏の設計・監督によるものです。

建物は檜造りで、屋根は杉板を敷きつめた柿葺き(こけらぶき)。海の神・えびす様を祀る神社にふさわしく、船庫(船を入れておく蔵)を模した独特な造りは、壁が無く、梁(はり)が剥き出しで、天井が無いのが特徴です。

こういった構造に加え、神社と境内全体が山に囲まれているため、音楽の神でもあるえびす様にふさわしく、優れた音響効果があります。
そのため、鳴物(楽器)を好まれるえびす様を敬って、音楽の奉納が頻繁に行なわれています。

本殿と拝殿の手前にある「神門」と「回廊」は、拝殿と同じく昭和3年に建てられたもの。造りも同じく檜造りと杉板の柿葺きの屋根。

海と音楽にまつわる宝物も多数。

『美保神社』がある美保関は、かつては船の要衝であり、北海道から下関を経て大阪へと至る交易船・北前船や、その他の多くの船が行き交う「風待ちの港」でした。

「関の明神さん(えびす様)は鳴り物好き、凪(なぎ)と荒れとの知らせある」と船乗り達が言い伝えたように、海の危険から船乗り達を守ってくれると信じられてきたえびす様と『美保神社』への信仰は、大変篤(あつ)いものでした。
そのため海上の安全や諸願成就を願って、全国各地からおびただしい数の楽器が奉納されてきたのです。

『美保神社』が収蔵するこれらの宝物のうち、なんと846点が国の重要有形民俗文化財に指定されています。日本に渡来した最古のオルゴールやアコーディオン、島原の乱で戦陣に出されたと伝わる陣太鼓などの宝物の一部が、毎月7日の『七日えびす祭』に、境内の『収蔵庫』にて公開されます。

なお、『七日えびす祭』では、他にも様々な祭事が行なわれます。
『美保神社』にお参りするなら、この日を目指すのも良いでしょう。

七日えびす祭の行事

●月次祭(つきなみさい)
毎月7日 9:00~ (拝観自由/拝殿の外より)

神様の御恩に感謝して、国と人々の安泰と繁栄を祈願します。
※1月の「初えびす祭」と4月の「例大祭」の際は時間が変わります

●奉納鳴物などの宝物公開
毎月7日 10:00~16:00 (拝観料:無料)

国の重要有形民俗文化財である「奉納鳴物」2~3点や、「諸手船」「そりこ」などを月変わりで公開します。

●「月次御幣」の色目変更
古くから授与している『美保神社』独特の御幣(ごへい/神様へのお供え物かつ、ご神霊の依り代ともなるもの)の色目を、毎月新たにする行事。
和の雅(みやび)が漂う古式ゆかしい襲(かさね)は、四季の移り変わりをそれぞれの月の草木などの色目で表している。
※希望者は授与していただけます(初穂料:1体2,000円)
※1年分12体の「月次御幣」を郵送していただくこともできます(申し込み:郵送またはFAX)

●「金色の鯛守」の授与
「月次祭」の終了後に、毎月30体限定・お1人1体までで、白地に金糸の特別な御守りが授与されます。
※予約や郵送は不可

また、『七日えびす祭』で授与される御朱印は、専用の紙に金の墨汁で揮毫(きごう)された、やはり特別なものになります。
御朱印の授与は毎日行なわれていますが、特別な御縁を結ぶために、やはりこの日を目指してお参りする人々も多いそうです。
※ご持参の朱印帖への揮毫(きごう)は不可

毎日の祭事と特殊神事

『美保神社』では、ほかにも毎日行なわれる祭事や、年に1度だけ行なわれる特殊神事などがあります。
いずれも日本の起源や海と音楽の歴史に深く関わるものなので、ぜひ拝観して、それらのルーツに思いをはせてみたいものです。

<毎日行なわれる祭事>

●朝御饌祭(あさみけさい)・夕御饌祭(ゆうみけさい)
毎日 8:30~ / 15:30~  (観覧自由/拝殿の外より)

神様に日々のお供えを献上し、その御恩に感謝する祭典です。
祝詞(のりと)が響き、楚々とした巫女舞が奉納されるひとときは、参拝した人々の心まで清めてくれそうです。
※その他の祭事によって、時間が変わることがあります
※「夕御饌祭」で奉納される神楽は、日によって「巫女舞」の場合と、太鼓・笛のみの場合があります

<特殊神事>

●青柴垣神事(あおふしがきしんじ)
4月7日 13:30~

「国譲り神話」において、えびす様が「青柴垣(青葉のついた柴(しば)で編まれた垣根)にその身を隠された」という故事に由来した祭礼で、豊作を祈る春祭でもあります。
前後の3月31日の夜から4月12日の間も、神楽やお供え物が奉納されたり、様々な儀式が執り行なわれます。
様々な習俗と故実が含まれており、古代の人々の暮らしや、祈りの姿を知ることができます。

●諸手船神事(もろたぶねしんじ)
12月3日 13:30~

「国譲り神話」において、天照大神の使いの神様に、えびす様が国譲りを承諾された故事にちなんだ祭礼です。
古くは「八百穂祭(いやほのまつり)」とも呼ばれ、自然と稲の恵みに感謝する秋祭りでもあります。

●神迎神事(かみむかえしんじ)
5月5日 深夜2:30~

島根半島の沖にある「沖ノ御前島」まで船でお参りし、御神霊を本殿内の大后社・姫子社までお迎えする神事です。暗闇の中で行なわなければならないため、付近の家々は明かりを消し、厳粛な空気と緊張感の中で船が帰るのを待ちます。
船中では神楽が奏でられ、この音から「デンチャン祭」とも呼ばれています。

●虫探神事(むしぼししんじ)
8月7日 深夜3:00~

宝物の虫干しを行う神事です。
暗闇の中、お面や鳴物などを本殿から取り出しながら、鞨鼓・太鼓・つづみなどによる乱拍子の神楽が奏でられます。さらに神霊の依り代である「面」を着けた巫女が舞い、参列者が拝礼を行った後に、宝物を本殿に戻します。

「国譲り神話」の地の地理・風景・歴史を体感。

このように、『美保神社』は美保関の地の暮らし・歴史・習俗などとも密接に関わっています。その成り立ちを深く知るために、周辺の名所を巡ってみるのもおすすめです。

●青石畳通り
江戸時代に造られた『美保神社』への参拝道で、その名の通り「緑色凝灰岩」が敷き詰められています。“未来に残したい漁業漁村の歴史文化財産百選” に選ばれた町並みは、散策に最適です。

●美保関資料館
「風待ちの港」として栄えた美保関の歴史を、1687年から続く地元の商家・鷦鷯(ささき)家に伝わる貴重な資料をもとに紹介しています。

●北前船資料館
明治時代に建てられた船宿を利用した、北前船の資料館です。江戸時代~大正末期にかけて栄えた美保関港の姿を、今に伝えています。

さらに島根半島の端にまで足を延ばせば、“世界の歴史的灯台100選” と “日本の灯台50選”に選ばれた『美保関灯台』があります。そして松江方面に少し戻ってから島根半島の北側に出れば、日本海の荒波に浸食された岸壁や、奇岩奇勝が広がる『美保の北浦』があります。

同じく島根半島の北側には、真っ白な砂浜とマリンブルーの海水浴場もあり。釣りのメッカでもあるので、海の神様・えびす様の恵みを感じながら美しい日本海の風景を堪能できます。

連綿と続く歴史と、そこで営まれてきた人々の祈りを感じられる『美保神社』。
ゆったりと計画を立てて、美保関全体とともに巡ってみたいものです。

『美保関港』や『美保関灯台』からは、はるか日本海沖に浮かぶ隠岐の島や、美保湾と中海を挟んで広がる約20kmもの海岸・弓ヶ浜、中国地方の最高峰・鳥取県の大山(だいせん)などが望める。

『美保神社』と美保関に住まう人々は、今も昔も変わらぬ祈りの日々を営んでいる。

日本の始まりに関わる由緒を持ちながらも、『美保神社』の境内には由緒書などの看板はほとんど設置されていない。その理由は、「その時々の空気感と雰囲気を、先入観なしに感じ取っていただきたい」からだそう。語られずとも感じられる、森閑とした霊気に身を浸したい。

- DATA
美保神社

HP:http://mihojinja.or.jp/
住所:島根県松江市美保関町美保関608

電話:0852-73-0506
参拝:自由
授与所:8:30~
ご祈祷:8:30~(祭礼がある日や、混雑時はお待ちいただくことがあります)

<交通>
■JR松江駅から: バスのみ
一畑バス(万原線・美保関ターミナル行) ~ 美保関コミュニティバス(美保関線) ~ 美保神社入口
■JR境港駅から: バスのみ
美保関コミュニティバス(境港線) ~ 美保関コミュニティバス(美保関線) ~ 美保神社入口

※交通の詳細は下記を参照ください
http://mihojinja.or.jp/kotsu/

<えびすライナー(期間限定の直行バス)>
■米子鬼太郎空港 ~ JRR境港駅 ~ 美保神社
※年末年始・GW・7月13日~11月30日の土日祝に運行(変更・運休の場合あり)
※えびすライナーの運行情報は下記を参照ください
https://www.mihonoseki-kankou.jp/bus/

<駐車場>
地区駐車場2ヵ所(無料)

※写真提供:美保神社/無断転載禁止

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