2019年6月30日  -  匠・職人 / 加工食品

匠・職人 / 加工食品

【岡富商店/大田市】全国でも稀有な“一日漁”の干物を、真心こめて手作り。

早朝に漁に出て、夕方水揚げした魚で作る鮮度抜群の干物。島根県の中央・大田市(おおだし)独特の漁で、全国でも屈指の鮮度と品質を誇る。

鮮度抜群の“一日漁”の干物を、食卓へ直送。

“一日漁(いちにちりょう)”。
聞き慣れない言葉ですが、それは一体どのような漁なのでしょうか?

「それは、ここ大田市で昔から行われてきた漁です」と語るのは、昭和25年創業の岡富商店(おかとみしょうてん)の社長・岡田明久氏です。「早朝に漁に出て、その日のうちに水揚げされる“一日漁”の魚は鮮魚としても最上ランク。お刺身にしても極上の魚を、あえて一夜干しにしています」。

岡富商店が原料とするのは、お店にほど近い久手港や和江港に水揚げされる魚。とことん“大田市の魚”にこだわり、さらに最も脂ノリの良い時季「旬獲れ」にもこだわって、美味しく・高品質で・高鮮度な干物を作り続けています。

魚のさばき方や塩加減・干し方・保存方法などの全工程にこだわりが満載。買った人の約6~7割がリピーターになるという、驚異のリピート率を誇る(のどぐろの鱗落としの様子)。

岡富商店の社長・岡田明久氏。“一日漁”をブランド化した立役者でもある。

わずか数港でしか行われていない“一日漁”とは?

“一日漁”は、早朝に港を出て昼間に近海で漁をして、夕方には帰港。そして獲れた魚はその日のうちに水揚げします。さらに、その水揚げされた魚が、そのまま夕方から夜にかけて行われる”晩市“と呼ばれる“せり”にかけられます。
“一日漁”と“晩市”が行われている港は全国でも非常に珍しく、北陸地方の一部ほか数か所だけ。かつては各地で行われていたと見られるそうですが、1960~1970年代に様々な技術が発達してからは、冷蔵設備を備えた大型船による“沖合漁業”が主流となりました。

岡富商店は、そんな“一日漁”で水揚げされた魚を“晩市”の“せり”で買い付けてきます。魚種によっては買い付けたその日の夜に下処理をし、翌日には加工するため、全国一と言ってもよい新鮮さを誇っているのです。

大田市の漁船。「小型底曳(び)き船」が主で、船が小さく海の上に泊まることができないため、漁を終えたらその日のうちに帰港する。反面、総数は40数隻という多さで、全国でも数ヶ所でしか行われていない“晩市”をさらに唯一とも言える規模にしている。

「小型底曳き船」による漁の様子。海との真剣勝負で獲った魚を、その日のうちに港に届ける。

大田の地魚の美味しさをそのままに加工。

こうした希少性と群を抜く鮮度によって、大田市で獲れた魚の85~90%は市外や県外に出荷されています。つまり、それだけ大田市産の魚の評価は高く、漁獲量も多いのです。

「普通の“沖合漁業”は朝に出て、1日目は沖まで進んで2日目から漁を始めます。そして、そのまま2日~5日ほど漁を続けるため、“沖合漁業”の魚はそれだけ長く船上に置かれることになります。ですので、“一日漁”の魚と“沖合漁業”の魚は鮮度も品質も比較になりません」と岡田氏は解説します。

さらに岡富商店の一夜干しは保存料・着色料は無添加。加えて使う塩にもこだわっており、魚の種類によって「天日塩」と「並塩」の2種類を使い分けています。そして魚を漬け込む「塩水(えんすい)」の濃度は、わずか1%という減塩仕立て。塩分や健康が気になる方でも、安心して美味しい干物が楽しめます。

一枚一枚丁寧に、魚の質と状態を見極めながら最高の味に仕上げる(のどぐろの一夜干)。

素材の良さを引き出す熟練の技。

「“一日漁”の魚は鮮度抜群ですが、それだけでは良い干物にはなりません。うちが気をつけているのは、手早く処理して手早く仕上げることと、きちんと手間ひまをかけること。干物の工程は、まずは魚をさばいて塩水に浸けるんですが、それを冷蔵庫で一昼夜寝かせておくんです。こうすると、旨みが凝縮してより美味しい干物になります。いわゆる“熟成”のプロセスで、効率と生産性は落ちますが、こうすることで塩がまんべんなく行き渡ってムラのない食味になるんです。お店によってはこれをせずに濃い塩水に短時間浸け込んで、それを水洗いしてから干すところもありますが、そうすると味のムラやしょっぱさが出てしまいます。こうした手間ひまを惜しまないことが、うちの干物のポイントです」と岡田氏は語ります。

「あとは魚体の大きさによって、塩水に浸ける時間や干し加減を調整しています。干せば干すほど塩度が高まるので、職人の経験で加減を見計らっています」。

こうした手間と熟練の技によって、岡富商店の干物は塩度わずか1%(100g中1g/食塩相当量)という減塩仕様に保たれています。それでいて、魚の旨みは最大限に引き出されていて、一口食べれば明らかに違いが分かります。

まるで生きているかのような“一日漁”の魚(甘鯛ほか)。古い魚は塩を吸いやすくなるため、“沖合漁業”の魚で作った干物は塩辛くなりがち。岡富商店の干物は魚本来の旨さが際立つ。

魚をおろす際に血合いを丁寧に取り除くため、臭みがなく、血が身に浸透するといった見た目の悪さもない。

グルメもうなる、大田の地魚の美味しさ。

大田市で主に水揚げされるのは、あなご・エテかれい・のどぐろ・甘鯛などです。さらに近年の不漁で数は減っているものの、真っ白な身とプリプリした食感の白いかも名物です。

「これらの大田の地魚で作った干物は、鮮度も品質も他産地とはまったく違います」と岡田氏は誇らしげに語ります。
「特に赤物(のどぐろ・甘鯛等の体が赤い魚)は、干物にしてもその赤味が鮮やかに残るんです。なので、一般的なのどぐろの干物は裏返して販売されていますが、うちの干物は表(赤い皮目の部分)を見せて販売しています。鮮度抜群で魚本来の美しさも保たれているからこその利点です」。

さらに数年前からよく獲れるようになった「あなご」が、大田市と岡富商店の新たな名物になりつつあります。

「あなごと言えば生を煮たり焼いたりして食べるイメージでしょうけど、干物にすると思わぬ美味しさが生まれました。旨みがギュッと凝縮して、非常に美味しくなることが分かったんです。特に天ぷらにすると、生との違いが際立ちます」。

岡田氏が薦めるこの「あなごの一夜干し」は、朝日テレビの人気番組・『食彩の王国』に取り上げられて人気が爆発!
平成29年度の水揚げ高は島根県が全国一位となり、さらに大田市がそのほぼ半分の45%を占めるなど、新たな名産品として評価を高めています。

あなごの一夜干。「生よりも美味しい」と大評判。

大田市が認証する地場産品のブランド『おおだブランド』にも、岡富商店の商品は多数選ばれている。甘鯛・白いか・のどぐろ・エテかれいの一夜干、甘鯛のあぶりスモーク・さば塩辛の合計6商品はぜひ味わってみたい逸品。

エテかれいの一夜干。白くてクセのない身はどんなおかずにもピッタリ。

すべてはお客様の笑顔のために。

岡富商店がここまで「大田市の魚」にこだわるのには、れっきとした理由があります。
「昔は原料の魚が不足したら、他の港から取り寄せたりもしましたが、やはり干物にした時の仕上がりが全く違いました。何につけても大田市の魚が一番で、何があってもここの魚を使うことが第一だ、と実感したんです。そして第一に、自分が食べて美味しくないものは、お客様にも食べさせたくありません。そうした商品はいかがなものか? と思ってしまいますので、手間ひまかかっても多少採算が多少合わなくても、大田の魚にこだわり続けています」と岡田氏は続けます。

「特にうちはギフトがメインですので、お客様の大切な人が召し上がるんだ、と思ったら気は抜けません。そうしてお送りした干物に「美味しい!」というお声を頂ければ、やっぱりすごく嬉しいし、やりがいも感じます。その繰り返しでリピーターのお客様が増えている、と実感しています」。

さらに贈られた人から新たに注文が入ることも多く、全国的にギフト需要が落ち込む中で、年々売上が増えているそうです。
大手ネットショッピングモールのアンバサダーからは、「岡富商店さんの干物は“生干物”ですね。ほとんど生のような美味しさです」と言われたそう。全国各地の干物を食べ比べているプロも、納得の高品質なのです。

ついさっきまで海を泳いでいた魚は、抜群の鮮度。

“一日漁”ブランドを大田市全体のシンボルに。

このように全国的に知名度を上げている“一日漁”の干物ですが、これはもともと岡田氏が考えたキャッチコピーでした。

「県産品のギフトカタログに商品を載せた際に、他のお店さん達がありふれた言葉を使っていたのが気になったんです。“新鮮” “鮮度抜群”といった言葉で、それ自体は事実なんですが、他産地との差別化はなかなかはかれません。そこで、より印象的で大田市の魚の特別感が伝わる言葉を、と考えて“一日漁”を提唱しました」

それを10年ほどアピールし続けたところ、岡富商店の干物は大評判に。そこで自社のみでなく、大田市全体のキャッチコピーにしていこうと、同志をつのって『おおだ一日漁推進協同組合』を立ち上げました。

平成24年8月に10社が集って以来、大田市や大田商工会議所なども全面的に応援。広告・広報・見本市への出展などのバックアップを得て、“一日漁”のPRの規模と速度がより高まりました。

「我々は魚を買いつけて売る“魚商人”の集まりです。そうしたPRのノウハウや資金が不足していたところに、こうした支援もして頂けるようになり、“一日漁”の知名度が一気に高まりました」。

こうして都市圏や大手流通業者などにも大田市の“一日漁”は知られた存在に。そして2018年には、農林水産省が選ぶ農山漁村活性化の優良事例・『ディスカバー農山漁村の宝』にまで選定されました。
これは全応募数1055地区の中から、わずか32区の枠に入るという快挙。こうして“一日漁”は、大田市ならではのブランドとして認知されたのです。

大田市を愛する地元の魚商人として、地域全体の活性化にも尽力。

漁業の在り方や、漁師のクオリティ・オブ・ライフをも改善。

「“一日漁”のブランド化の意義は、それだけではないんです」と岡田氏は続けます。
「“一日漁”独特の“晩市”が開かれることで、漁師さん達は14時くらいに漁を切り上げて港に帰ってこられます。それから魚を水揚げしても、16~18時には家に帰れます。そして晩酌をしたり、家族で団欒したりと、サラリーマン並みの勤務時間と生活の質が保たれるんです」

つまり一次産業としては、クオリティ・オブ・ライフが非常に高いということ。「働く時間が長い・仕事がきつい・休みが無い」といった負の面がなく、漁師を続けられる動機となっています。

「これが一般的な”沖合漁業“ですと、早朝に出漁して、沖で2~5日くらい泊まって、早朝に帰港してから水揚げします。すると労働時間が基本的に長くなってしまい、と同時に家族と過ごす時間も限られてしまうんです。さらに、こうした“沖合漁業”で獲れた魚は数日間船で取り置くことになりますので、どうしても鮮度が落ちてしまいます」

こうした負の側面を解消して、魚を獲る人(漁師)・買い付けるお店(魚商人)・食べる人(消費者)の全てがメリットを享受。大田市では昔から土曜日が休漁日なので、漁師の暮らしにも、漁獲資源の保護という面でもメリットがあるそうです。

大田市ならではの漁法をブランド化することで、漁師の暮らしや将来もバックアップ。「漁師さんに元気で楽しく魚を獲ってきてもらいたい」という想いで『おおだ一日漁推進協同組合』は活動している。

そして、こうして獲れた“晩市”の魚は、大阪や北九州の市場にも出荷されるため高く売れます。そのため大田市では「船に乗り続けたい」という漁師が多く、その子どもも跡を継ぎやすいといいます。
全国的に後継者不足で、減船が進む漁業。しかし、大田市ではそういった問題が少なく、“一日漁”のお陰で「三方良し」の円満な経済活動が回っています。

全国的にも希少で、魚や漁にまつわる諸問題まで改善している大田市の“一日漁”。
それで獲れた魚の干物を食べて、岡富商店と大田市の在り方に思いを馳せてみてはいかがでしょうか?

「一口食べたら忘れられない」と評判の味。単品から多くの魚を詰め合わせたギフトセットまで、お好みで選べる。

- DATA
岡富商店

HP:https://www.okatomi.jp/
住所:島根県大田市久手町波根西1988-3

電話:0854-82-8102
営業時間:10:00~20:00
休日:日曜・祝日・年末年始・8月末

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