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【來間屋生姜糖本舗/出雲市】江戸時代から300年以上も愛され続けている、素朴でやさしい「出雲名物」のお菓子。

2020年2月13日

甘味と辛味のバランスが絶妙なお菓子「生姜糖」を、創業以来300年以上も作り続けている老舗。
出雲のお土産として江戸時代から人気の逸品で、レトロ可愛いパッケージと同じく当時のままの製法と味を今に伝えている。

江戸時代から300年以上も守り続けた、素朴でやさしいお菓子。

「生姜糖(しょうがとう)」。
生姜と砂糖と水だけで固めた、シンプルでいて奥の深いお菓子です。

口に含むとホロホロと溶けて、砂糖の優しい甘さに生姜の香りがほんのりと華を添えます。ピリリとしたほど良い辛みが舌に心地よい印象を残し、甘さと辛さが絶妙に調和した、他にはない味わいを楽しめます。

この粋な味を300年以上も守り続けているのが、出雲の歴史的な市場町・「木綿街道」にお店を構える『來間屋生姜糖本舗(くるまや しょうがとう ほんぽ)』です。

生姜は出雲市斐川(ひかわ)町の出西(しゅっさい)地区で栽培されている、特徴のある品種・「出西生姜(しゅっさいしょうが)」だけを使用。その絞り汁と砂糖を炭火で煮立てて、銅製の型に一気に流し込みます。
煮すぎるとカルメラ状に焦げてしまい、煮詰め方が足りないとうまく固まりません。代々受け継いできた秘伝の製法と、熟練の職人の勘が頼りです。

普通の生姜は繊維が多くて取り扱いにくい。だが出西生姜は繊維が少なく取り扱いやすい。また、煮詰めても爽やかな香りと独特の甘みが失われないため、とても上品かつ美味しい「生姜糖」になる。

収穫したての出西生姜。小ぶりで柔らかく、上品な香りとほどよい辛みを持つ特徴のある生姜。
かつては諸大名に献上されていた高級品で、独特の風土を持つ出雲の出西(しゅっさい)地区でしかこの特徴が出ないという。

『來間屋生姜糖本舗』に伝わる銅製の型。熱の伝導率が高く冷えやすいため、「生姜糖」の型(かたち)が形成されやすく、型から取りはずしやすい。

創業以来ずっと変わらない味。

『來間屋生姜糖本舗』の「生姜糖」が普通の生姜糖と違う理由は、原料の出西生姜がショウガ独特のエグみが少なく、とてもさわやかな味わい でフルーツのようだからです。そのため、ありふれたショウガのお菓子をイメージして食べるとかなり驚くかもしれません。

また、単に美味しいだけでなくヘルシーなお菓子でもあります。
出雲には「娘を嫁に出すなら出西郷へ、生姜の匂いで風邪ひかぬ」という民謡があり、いま話題の「温活効果」が古くから知られていました。
それでいて、ショウガ独特のエグみが少なくとてもさわやかな味わいなので、ショウガのお菓子やショウガ料理が苦手な方にもおすすめできます。

箱入りの「生姜糖」は格調高い雰囲気で出雲のお土産に最適!

出西生姜の特長を存分に引き出した、通もうなる味。

そんな女性の悩みにもうれしい『來間屋生姜糖本舗』の「生姜糖」ですが、中でも11代目店主の來間久(くるま・ひさし)氏がおすすめするのは、以下の3商品です。

●生姜糖1枚入(板状)

炭火で煮詰めてひとつひとつ手作りで仕上げた、定番の「生姜糖」。昔ながらの製法で、生姜の絞り汁と砂糖を煮溶かして、銅製の型に流し入れて固めています。
チョコレートのような板状で、「袋入り」と「箱入り」の2種類があります(写真は「袋入り」)。

●ひとくち生姜糖 紅白12ヶ入

昔ながらの板状の「生姜糖」をひと口サイズにカットして、飴のように一個ずつ包んだ商品です。
種類は生姜糖(白・紅)・抹茶糖(緑)の3種類で、こちらは小箱に生姜糖(白・紅)を彩り美しく詰めた一品です。
ちょっとしたお祝いやお返しに最適の、可愛いミニセットです。
※「紅」はふつうの「生姜糖」にベニコウジ色素でほんのり紅色を付けています

●ひとくち生姜糖・抹茶糖15ヶ入り

同じく「ひとくち生姜糖」のバリエーションで、こちらは生姜糖(白)と抹茶糖の詰め合わせです。
出雲・松江はかつて茶人として名をはせたお殿様に治められた歴史から、お茶どころとして有名。その伝統を受け継いで、良質な抹茶をふんだんに使っています。
伝統の生姜糖と、やはり古式ゆかしい抹茶糖を一度に楽しめます。
※抹茶糖には生姜は不使用

その他にも、しょうが湯・しょうがの砂糖漬け・各種ギフト商品など、いろんなお菓子があります。バレンタインやホワイトデー向けの商品、ブライダル用パッケージなどもあるので、プレゼントにも最適です。

日本元祖の生姜糖の歴史。

このように、シンプルでありながら奥深い「生姜糖」とショウガのお菓子ですが、その歴史はなんと正徳5(1715)年にまでさかのぼります。

初代店主の來間屋文左衛門(くるまや・ぶんざえもん)氏は、寛文11(1671)年に出雲・平田に生まれました。
松江藩の奉行所に勤めて帯刀を許されるほどに出世しましたが、のちに故郷に帰り茶道と華道をたしなむように。ですが、茶道と華道に欠かせないお茶菓子の質は、当時の平田では「はなはだ粗悪で保存性にも乏しい」という有り様だったそうです。

そこで、「自ら風流で珍味な菓子を作ろう」と決意。
試行錯誤の末に、「砂糖に生姜を混ぜて練って固めれば、甘さと辛さがほどよく入り混じった上に、風流で保存性も良い菓子ができるのではないか?」と思いついたそうです。

当初は幾度も失敗して損失も出してしまいましたが、くじけずに十数回もの挑戦を繰り返した末に、見事に成功!
「原料の生姜は出西産に優るものはない」ことも発見して、正徳5(1715)年に今に伝わる「生姜糖」を完成させました。

炭火窯。自然の火の力で丁寧に溶かして煮詰める。

ショウガ汁を加えるタイミングにも職人技が光る。

ほどよく煮詰めた原液を、銅製の型にひとつひとつ流し込んでいく。

その後、確立させた製法を一子相伝としながらも、徐々に生産量を増加。そして徳川幕府 第11代将軍・家斉(いえなり)公の代に、家斉公と松江藩主に献上しておおいに称えられました。これがきっかけで、世間にも広く評価されるようになりました。

以来300年あまり、今もまったく同じ製法で美味しい「生姜糖」を作り続けています。

「昔ながらの製法を変えずに作り続ける」ことにこだわって、長年愛され続けてきた『來間屋生姜糖本舗』の「生姜糖」。その味と良さを変えないために、作り手もぶれずに日々製造に取り組んでいる。

現在の店舗は、明治9(1876)年に「片原の大火」で消失した後に再建された。それでも築約140年以上で、平成18(2006)年にはその趣(おもむき)を損なわないように大改修された。平田地方伝統の「切妻 妻入り塗り壁造り」という防火性の高い建築方法で、その建物は歴史的な資料としても価値が高い。

往時の木綿街道と、それに沿って流れる平田船川の様子。
『來間屋生姜糖本舗』が店を構えるここ平田は、東を宍道湖に、西を日本海に挟まれた「水運の市場町」として栄えてきた。特に江戸末期~明治初期にかけては、船による特産の「平田木綿」の取引が盛んに行われていた。

伝統を守りながら将来を見据える。

こうして江戸時代からの伝統を今に伝え続けている『來間屋生姜糖本舗』は、さらなる伝統の復興や、新たな試みにも取り組んでいます。

昔、出雲にはサトウキビを栽培して砂糖を作っていた製糖会社がありました。その歴史にならい、「ぜひ出雲産の砂糖を作ってみたい」と挑戦しているそうです。

これが実現すれば、やはり出雲産の出西生姜と合わせて「100%出雲産」の生姜糖が誕生するかもしれません。
さらに生姜を使った素朴で懐かしいお菓子や、生姜の良さを生かした新たな食品を、様々に考案すべく研究を続けているそうです。

出雲の伝統を守りながら、それを新たな時代へ繋げていく――出雲のお土産にぜひ買って帰りたい、歴史を伝える逸品です。

出西生姜。秋に採れる「古根」のみを厳選して、伝統の味を保っている。

出雲の歴史を変わらず担い続けながら、新たな時代も見据える。

- DATA
山陰名産 來間屋生姜糖本舗

HP:http://syougatou-honpo.jp/
住所:島根県出雲市平田町774

電話:(0853)62-2115
営業時間:9:00~19:00
定休日:不定休

取材協力・写真提供:來間屋生姜糖本舗/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら

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