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2019年9月21日  -  

静謐(せいひつ)な時の流れの中にたたずむ、山陰の小京都。【津和野の町並み/島根県津和野町】

白壁と赤瓦の町並みが美しい、情緒あふれる古都。
静かな山あいに雅(みやび)な石畳の町がこつ然と現れる様は、まるで隠れ里のよう! 島根の最西端・津和野藩の城下町として栄え、多くの文人・芸術家を出して日本の近代化にも影響を与えました。

静かな気品を漂わせる、はんなりとした古都。

日本の各地に残る昔ながらの街並みは、その土地の人々が刻んできた歴史の証。そんな事実をより実感させてくれるのが、「山陰の小京都」と呼ばれるここ、津和野(つわの)です。

美しい白壁と石見地方(いわみちほう/島根の西部)独特の赤瓦とのコントラストは、絵に描いたような美観!
江戸時代の街並みや伝統行事が、今も脈々と受け継がれています。

さらに町中に巡らされた掘割(用水路)を泳ぐ鯉の群れや、日本五大稲荷のひとつ・『太皷谷稲成神社』に続く千本鳥居の階段、山の上の『津和野城址』から望む壮大な景色など、いくつもの美観が見られます。

オシャレなカフェや郷土料理のお店も多く、優雅な旅行を楽しめます。

初夏には掘割に沿って植えられた約1千株もの花菖蒲が咲き誇る。
(見ごろ:6月初旬~6月下旬)
この時季を目指して旅行する人も多い。

幕末に描かれた絵・「津和野百景図」。
これに描かれたままの風景や習俗が今も残り、まるでタイムスリップしたかのよう! 島根の江戸時代が体感できる。
(「津和野町 日本遺産センター」所蔵)。

山口と島根を結んで走る「SLやまぐち号」。
JR津和野駅が終着駅なので、萩・秋吉台とのツアー旅行もおすすめ。
津和野は島根の最西端にあり、独自の文化が発展した。

ほっこり、はんなり、大人の旅行にピッタリの小京都!

雅(みやび)で美しい津和野の町には、深く長い歴史を物語る名所がたくさん。まずは代表的な次のスポットを巡って、その魅力に浸りましょう。

●本町/殿町通り(鯉の掘割)

「津和野といえばこの眺め!」と言うくらい有名な、石畳の大通り。
江戸時代からの商家や酒蔵が立ち並び、古民家を改装したハイセンスなカフェや、土産物屋・食事処なども多数。
散策や写真撮影に最適で、「津和野藩校 養老館」や、「津和野町 日本遺産センター」、「津和野カトリック教会」など、歴史的な名所もあります。

白い漆喰(しっくい)の壁と、黒×白の格子が美しい海鼠壁(なまこかべ)は、気品あふれるたたずまい。
町全体にある掘割(用水路)には、色とりどりの鯉が泳いでいます。
(鯉の餌100円/販売:津和野町公民館・沙羅の木)

アクセス / JR津和野駅から徒歩5分

●津和野町 日本遺産センター

津和野の名所や習俗などを描いた、「津和野百景図」の複製を展示しています。
さらにそれらに描かれたストーリーを、映像やパネル展示などで解説。津和野の旅行をより深く楽しむためのガイダンス・センターでもあります。

4つのテーマでまとめられた「津和野百景図」は、津和野を知るための良ガイド!
「四季」「自然」「歴史文化」「食」に分かれていて、津和野藩の最後の藩主の側仕えだった栗本格齋(くりもと・かくさい)が描きました。

今も町中に息づく風景を探すために、津和野旅行の最初に立ち寄ってみてください。

なお、この「津和野百景図」は「津和野今昔~百景図を歩く~」というタイトルで文化庁の“日本遺産”になっています。

●津和野藩校 養老館

文武両道を説いていた、津和野藩の藩校。
第8代藩主・亀井矩賢(のりかた)公が創り、今は「武術棟(槍術教場・剣術教場)」と「御書物蔵」の2棟が残っています。

津和野出身の文豪・森鷗外をはじめ、近代日本哲学の祖・西周、日本の紡績業の父・山辺丈夫、日本の地質学の父・小藤文次郎など、あまたの偉人を輩出しました。

津和野の名園・「堀庭園」を作った堀氏の最盛期の当主・第15代 堀藤十郎も、ここの出身です。
(島根県の“史跡”に指定)

アクセス / JR津和野駅から徒歩10分
開館時間 / 9:00~17:00
入館料 / 100円(館内見学のみ)

※小学生未満・障がい者手帳と療育手帳の交付人およびその介護人は無料

●覚皇山 永明寺(かくおうざん ようめいじ)

室町時代から続く禅宗のお寺。
歴代の津和野藩主の菩提寺で、初代 津和野藩主・坂崎直盛公や、文豪・森鷗外などの偉人たちの墓があります。

森閑とした参道と緑豊かな庭園は、せわしい日常を忘れさせてくれる。
ゆったり、のんびり、大人の旅行を楽しみたい。

巨大な萱葺き屋根の本堂は、安永8年(1779)に再建されたもの。
庫裡(くり)・鐘楼(しゅうろう)などは安政6年(1859)に再建されました。
永い歴史と見事な景観で、島根県の“有形文化財”に指定されています。

アクセス / JR津和野駅から徒歩15分
開館時間 / 9:00~16:00
休館日 / 不定休
拝観料 / 大人300円・中学生200円・小学生150円


●堀庭園

かつて数十の鉱山を所有していた「中国の銅山王」・堀氏の庭園。
隆盛を極めた名家の威光を示す、見事な造形美です。

江戸時代に作られた「主庭」をメインに4つの庭園から成り、時代ごとの様式の違いを楽しめます。周囲の借景を含む約6.5ヘクタールの面積が、国の“名勝”に指定されています。

当時の島根の職人技や、豪商の生活様式がうかがえる貴重な庭園です。

アクセス / JR津和野駅から町営バス「長野」行きで約20分~バス停「堀庭園」下車
開館時間 / 9:00~16:30
休館日 / 月曜(11月は無休/月曜日が祝日の場合はその翌日)
入場料 / 一般500円・中高生300円・小学生200円

※「旧畑迫病院」との共通入場料・団体割引(20名以上)有



●太皷谷稲成神社(たいこだにいなりじんじゃ)

“日本五大稲荷”のひとつに数えられている、商売繁盛・開運厄除の神様です。津和野を見おろす高台に建っていて、山の中腹に浮かび上がる赤い姿は、風情たっぷり!

「稲荷」ではなく「稲成」と書くのは、創建者の第7代津和野藩主・亀井矩貞(のりさだ)公の「願い事がよく叶う(成る)ように」という願掛けから。

かつては津和野藩主だけがお参りできましたが、明治の“版籍奉還”の後に一般開放されました。
数ある‟お稲荷様”の中でも名高く、島根だけでなく全国から参拝者と旅行者が訪れます。

アクセス / 津和野駅から徒歩30分

赤い鳥居が無限に連なるかのような、神秘的な参道。
旅行の情緒たっぷりの、‟山陰の小京都”らしい名所。

●津和野城址(つわのじょうし)

中世の城跡で、標高370mの山頂に築かれています。
南北約3kmにも及ぶ尾根にあり、かつてはその全てが要塞になっていました。

鎌倉時代の永仁3年(1295)から、約30年かけて作られたと伝わっていて、今も残る石垣は室町時代末期に築かれたと伝わっています。
日本の「山城」の特徴がよく残り、質実剛健なたたずまいは、風雅な津和野の町並みと好対照です。

さらにここは津和野全体を見渡せる展望スポットでもあります。
登りは「津和野城跡観光リフト」がおすすめですが、簡単に登れる登山道も通っています。(本丸まで徒歩約40分)

ただし「兵庫の『竹田城跡』にも劣らない絶景!」と噂の雲海が目的の方は、リフトの運行時間外の早朝がおすすめ。その場合は登山道から登りましょう。
※徒歩・リフト利用ともに歩きやすい靴を履いてください
※雲海は、天気や条件によって見られない時があります


アクセス / JR津和野駅からリフト乗り場まで徒歩40分~リフト5分~津和野城址(本丸)まで徒歩20分
リフト運行時間 / 9:00~16:30(下り便最終:16:20発)
リフト運休日 / 12月1日~2月末までの平日(土・日・祝は運行)
リフト料金 / 大人:700円(往復) 400円(片道)・小学生以下:500円(往復) 300円(片道)

※団体割引有(20名以上)

さらに、「津和野城」では、城の在りし日の姿を見られるVRアプリ・「ストリートミュージアムR」も楽しめます。特定の場所に行くと、まるで現実のようなお城の映像を表示!
IT時代ならではのバーチャル旅行です。

一面の雲海に包まれる早朝の「津和野城址」。島根の“天空の城”で、見られたら旅行の一番の想い出になりそう!

津和野には、ほかにも隠れキリシタンの悲哀を伝える「乙女峠マリア聖堂」、水彩画の巨匠・安野光雅氏の作品を展示した「安野光雅美術館」、文豪・森鷗外の旧宅などなど、あまたの名所や観光スポットがある。

さらに郷土食の「うずめ飯」や、清流日本一の「高津川」で獲れた鮎など、個性豊かな料理を食べさせてくれる食事処も多数あるので、ぜひ泊りがけで訪れてみよう。

独自の文化を今に伝える津和野の”三大伝統行事”。

さらに津和野には、多くの伝統行事が残されています。
中でも盛大なのが、以下の“三大伝統行事”。
全国的にも貴重で、島根の中でも独特の文化が見られるので、これらの日に旅行するのもおすすめです。

①津和野流鏑馬(やぶさめ)神事

走る馬の上から矢を射って当てる、勇壮な神事です。
昔の武具を身にまとい、わずか50cm四方の木の的3つを次々と射抜く技は、見事の一言! 地元・津和野と鎌倉の小笠原流の射手が競い合い、いっそう手に汗握ります。

この「津和野流鏑馬神事」の会場は、桜の名所の「鷲原八幡宮」。
神事はちょうど開花期に行なわれるので、素晴らしい技と美しい桜の競演が楽しめます。

開催日:4月第2日曜
会 場:鷲原八幡宮・鷲原公園


②鷺舞(祇園大祭鷺舞神事)

「津和野といえば鷺舞」! と言われるほどに有名な神事。
扇状に広げて舞う真っ白な羽と、赤い袴(はかま)の対比は、思わずうっとりしてしまうほどの美しさ!

天文11(1542)年に時の津和野城主・吉見正頼公が、山口の「祇園会」から移し入れました。本家本元は京都の「八坂神社祇園会」で、これが京都から山口へ、山口から津和野に伝えられて、今に残されています。

開催日:7月20日・27日
会 場:7月20日は町内11ヶ所 / 27日は町内9ヶ所


③殿町盆踊り大会(津和野踊り)

江戸時代から伝わる、由緒正しい盆踊り。
元和3年(1617年)に亀井政矩(まさのり)公が津和野藩主になって以来、今日までずっと踊られ続けてきました。

黒い頭巾をかぶって静かに舞う姿は、「まるで忍者みたい」と言われます。それもそのはず、元は初代藩主の父・茲矩(これのり)公が、敵の城を落とすために考え出した特別な踊りでした。

これを敵城の城下で踊らせ、大流行したところで兵士が潜入。そして踊りが好きな敵城の城主が見物に来た隙に、城になだれこませて占領しました。
この見事な奇策の成功を祝い、茲矩公の嫡子・政矩公が津和野に入封。以降、400年以上も踊られ続けています。

これが踊られるお盆は、別の伝統行事の「灯篭流し」も行われて、津和野が旅行者でにぎわいます。

開催日:8月15日
会 場:津和野殿町通り

※衣装の貸し出し有(要予約:0856-72-2070(津和野公民館)

津和野は2つの日本遺産・「津和野今昔~百景図を歩く~」と、「神々や鬼たちが躍動する神話の世界 ~石見地域で伝承される神楽~」に認定されている。
独自の文化と習俗であふれた、島根の小京都。
※「石見神楽」は複数ある構成地のひとつ

どことなく異国情緒を感じる赤瓦の町並みには、多くの名所・旧跡が残る。2泊以上の滞在旅行でも、すべて見きれないほど見どころたっぷり!

歴史ある町並みを歩き、珍しい行事を見て、‟島根の小京都”に浸る旅行。都会の喧騒をしばし離れて、ゆったりした時間を感じてください。

- DATA
津和野の町並み

HP:https://tsuwano-kanko.net/
住所:島根県鹿足郡津和野町後田イ71-2 (津和野町観光協会)

電話:0856-72-1771 (津和野町観光協会)
営業時間:9:00~17:00
休日:年中無休

取材協力・写真提供:津和野町観光協会/無断転載禁止
ライター:風間梢(プロフィールはこちら

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